第17話 子猫を拾っちゃった!
「……はあー、たこ焼き屋さんをやるつもりはないのよねえ」
食べてみたら意外と美味しかった。
しかしタコを自分で捕まえるのも捌くのも嫌だ。
だからたこ焼き屋さんは無理。
しかしパートナーとなる精霊と将来の職業を決めなければならない。
チラリと阿修羅を見る。
家の中で悩んでいるのは鬱々とするので阿修羅を連れて散歩に出てきたら、阿修羅はご機嫌で右に左に走り回っている。
―― ただの犬にしか見えない。
「はあー」
もう一度、大きなため息が出た。
ウジウジと歩き続けるうちにセントラル・パークの中央池にたどり着いた。
阿修羅はご機嫌で池の周りを走り回っている。
―― ただの犬にしか見えない。
「それにしてもセントラル・パークの景色は綺麗だわ。出掛けてきて良かったー!」
ふと周りを見渡すと、近くの茂みが揺れたような気がして、覗き込むと薄茶色の子猫がいた。
「みい〜」
「か! かわいい!!」
子猫は風花に駆け寄ってしがみついた。
「人懐こくて、かわいい〜。子猫ってことは親猫がいるはずよね…」
探してみたが親猫は見つからなかった。
子猫は必死で風花にしがみついている。
「ここに置いて行ったら大きな動物や魔物に襲われちゃう…」
子猫と目を合わせる。
「うちに来る?」
「にゃあ!」
―― 決まりだ。
「阿修羅〜、そろそろ帰るよ〜。」
阿修羅に声をかけて歩き出すと阿修羅が走ってきた。
「風花! そいつは!?」
「迷子みたいなんだよね、子猫だから近くに母猫がいるはずなんだけど見つからなくて…。阿修羅は分かる?」
「……猫っぽい気配はしないぜ」
「そっか、とりあえず連れて帰るけど貰い手見つかるかな」
「にゃあ!」
子猫が風花にしがみつく。
「ごめんね、うちはパン屋だから生き物は飼えないの」
生き物は飼えない……チラリと阿修羅を見る。
「お、俺は普通の動物じゃないし! 抜け毛も粗相もないから! 接客も出来るし!」
*******
「こんにちはー! バルさーん! カデンちゃーん!」
真っ直ぐに帰宅せず、隣のハンニバル宅を訪ねた。
「いらっしゃい! 風花ちゃん」
幼女な見た目のカデンがでてきた。
「ごめんね、突然」
「いいのよ! いつでも風花ちゃんなら歓迎よ!」
「いま散歩から帰ってきたところなんだけど、セントラル・パークで、この子を見つけたの」
「可愛い子猫ね!」
「カデンちゃんは猫が好き?」
「うん!」
「それなら頼みやすいかな…。この子、とても小さいでしょう? それなのに親猫も兄弟も近くに居なくて。だいぶ遠くまで探したのに…」
「子猫ちゃん…」
幼女なカデンちゃんが子猫を抱っこする姿は凶悪なほど可愛らしい。
「置いて行ったら大きな動物や魔物に襲われちゃうから連れて帰ってきたの。でもうちはパン屋だから動物はNGなの」
「ここで飼えないかって相談なのね?」
「貰い手は私が探すから、それまでお願い出来ないかな」
「構わん」
振り返るとハンニバルがいた。
「バルさん」
「その子猫は預かろう。カデンの良い遊び相手になるだろうしな」
「ありがと! バル大好き!」
子猫を抱きしめたカデンちゃんが大喜びでバルさんの周りをグルグルする。
風花の両親とフェルムとベイクまでやってきて、全員で子猫の世話をし、後をバルさんとカデンちゃんに任せて帰宅した。
子猫を抱いてブンブン手を振るカデンちゃんは可愛い過ぎた。
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