第9話 精霊のジャンピング土下座
「待って! ちょっと待って! 風花ちゃんせっかち! 説明させて!」
「手短にお願いします」
涙目の精霊に対する風花が冷静だ。
「なあ風花!やっぱり無慈悲な暗殺者とかどうだ?」
「ワンちゃんは黙ろうな…」
父が阿修羅を掴んで持ち上げた。
「グゲえぇ!」
いいところが閉まったようだ。
「う、ぐすっ。これは家事を代行する機械で、普通は電力で動くんだけど、私が召喚した機械は私の力で動くの」
泣きながら説明するカデン。
「もちろん風花ちゃんには私の加護がついてくるから風花ちゃんにも動かせるようになるわ。もし盗まれても盗人には使えない。風花ちゃんが誰かにプレゼントしても稼働できないの、使えるのは私と風花ちゃんだけ」
カデンがどやる。
「例えば、この洗濯機。この蓋を開けて汚れ物を入れます、洗剤も入れます。スタートボタンを押すと…」
ピッ、ピッ、ピーッ。・・・・ドドドド。ごわん・・・ごわん・・・
「設定された供給元から水が供給されて、自動的に洗濯から脱水までしてくれます。乾燥機も召喚できるから、雨の日も乾かせるし、下着を外に干したくない女の子にはピッタリね!」
なにこれ! 超便利かも…いえ、だめだめ。
焦っちゃだめ。交換のチャンスは一回だけなんだから、多少生活が便利になるくらいじゃだめ! 職業に繋がる加護じゃなきゃ!
ぶんぶんと頭をふる風花を見て焦るカデンちゃん。
「こ、これはどう! 冷蔵庫よ!
ここと、ここと、ここは食べ物を一定の温度に冷やすの。ここは冷凍よ! 長期保存したい時は冷凍に限るわよね!」
・・・いいっ! 冷蔵も冷凍もいい!!
でもダメ。水魔法や氷魔法の加護でも同じことができるし、というか水魔法や氷魔法の方が応用利くし! 多少生活が便利になるくらいじゃだめ! 職業に繋がる加護じゃなきゃ!
再びぶんぶん!と頭をふる風花を見て焦るカデンちゃん。
「こ、これはどうかしらっ! 掃除機よ。こうしてスイッチを入れると・・・」
ズゴゴゴゴーーーーーーー
「ゴミを吸い取るの!」
再びドヤ顔のカデンちゃん。
「吸い取ったゴミは、ここのタンクに溜まるの。ここを押すとタンクが外れてゴミを捨てられるわ。箒とチリトリだけで取りきれないゴミもすっきりよ! グラスやお皿を割った時も便利よ!」
ああっ! 箒とチリトリで取りきれないゴミ! いつもいつも気になってた! 最後に雑巾でギュってしてた。これもいいっ!!
でもでもでも、浄化の加護でも同じことができるし、というか浄化魔法の方が応用利くし!
多少生活が便利になるくらいじゃだめ!
職業に繋がる加護じゃなきゃ!
再びぶんぶん!と頭をふる風花を見て焦るカデンちゃん。
「風花ちゃん見て! 電気ポットよ! この蓋を開けて、水を入れて、スイッチを入れます」
・・・・ゴポポポポポポ、カチッ
「あっという間にお湯が沸きました!」
ドヤア!
蒔で火を起こす手間がないだと!!
ちょっとお茶飲みたい時も火を起こすのが大変過ぎて水で済ませていたけど、これがあればいつでもお茶を飲め…だめだめだめ!
火魔法でも同じことできるし!
というか火魔法の方がいろいろできるし!
職業に繋がる加護!
職業に繋がる加護!
ぶんぶん頭をふる風花を見て焦るカデンちゃん。
「これ! 風花ちゃん! これ見て! エアコン! 今は冬で寒いから暖房ね! リモコンを暖房に合わせて、室温26度でスイッチオン」
ピッ…ブーン
「風花ちゃん、ここに立ってみて!」
「あたたかい・・・」
「でしょう! エアコンはね、冬はお部屋を暖かくしてくれるの、夏は冷房でお部屋を涼しくしてくれるの! どう?」
「暖かくて幸せ。」
「風花ちゃん、じゃあ!」
「でもダメなの。カデンちゃんが召喚するカデンセイヒンはどれも便利だけど、それだけなの」
「エアコンは風魔法でも同じことができる。むしろ風魔法なら他のこともいろいろできる、でもエアコンはお部屋を冷やしたり温めたりしかできない。
私は加護を仕事に活かしたいの。だからごめんなさい」
「業務用家電も召喚できるから、今一度ご検討お願いしまあああああす!」
カデンちゃんが泣きながらジャンピング土下座した。
猫の“ごめん寝”スタイルのジャンピング土下座は可愛い過ぎた。
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