野の花たちの青春歌

澄ノ字 蒼

いじめの風景

「ほら、藤山(ふじやま)、泣いたら戻っていいぞ」

 ひょろっとして背の高く、目がぎらぎらと光っている、そして変声期で声がしゃがれた坊主頭の少年が茶化すように罵声を飛ばす。この少年は目が窪み、手足がひょろ長く、それでいて体中傷だらけで全体的に崖にある岩のように体中がごつごつしていた。威圧感のある少年だった。名前も岩樹と言う名前で名前にふさわしい貫禄だった。

周りも追従するように笑う。


藤山と呼ばれた少年は、名前の華やかさに似ず、背が低く、坊っちゃん刈りの頭をして、時代遅れのまわるい眼鏡を掛けていた。律儀に高校の学ランをフックまで留めていた。ただし、太っていて見っとも無かった。

藤山は俯いて、必死に涙をこらえている。

「泣いたらママがやってくるよ」

 キツネ目のひょろひょろした少年が茶化して、脇腹をどつく。


その時、3時間目のチャイムが鳴った。


「あ~あ、つまんね。もう3時間目始まっちゃったよ」


 誰とも言わず笑い声が響くと藤山を残して岩樹を中心とした5人組のグループが教室に帰って行く。


 これはいつもの風景だった。

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