we are アルバイター!

第1話「深夜のアルバイター」

「「ありがとうございましたー」」

 深夜のハンバーガーショップ。最後の客がお店を出て、店内には正社員さんが一人とアルバイトの僕と広永さんが二人だけになった。

「千屋さん、広永さん、休憩入って大丈夫ですよ」

 控室で休憩をとっていた正社員さんが出てくる。そうか、もう休憩の時間か。レジを離れて、正社員さんと入れ替わるように休憩室に入る。

「ふぁ……疲れた……」

 しっかりとドアを閉める。そして一応周りに誰もいないことを確認する。

 よし、誰もいない。

 一つため息をついて、楽になるようエプロンを外す。そして、


 ずっとつけていた女物のカツラを外す。


 ガチャ。

「あ、もう外しちゃったんだ」 

 と、ここでもう一人のアルバイトの広永さんが入ってくる。

「いやいや、当たり前ですよ。普通男子はつけないんだから、女装用のカツラなんて」

「いやいやいや。千屋ちゃんは男子じゃないよ。この店のアイドル女子だよ」

「いやいやいやいや。『千屋ちゃん』じゃないですよ。僕は立派な男子です」

「いやいやいやいやいや、だから千屋ちゃんは男子じゃないよ。男子のはずがないよ、こんなに可愛いんだから。男子のかけらなんてこれっぽっちもないよ」

 ……。

 …………。

「いい加減にして下さいはったおしますよ先輩!」

「いいから黙って女装していろクソガキ!」

 FIGHT! 

「大体なんで僕が女装しないといけないんですか、普通の格好でバイトさせて下さいよ!」

「うるさいな、女装したほうが店の売り上げが伸びるんだから、協力しろ!」

 ふっ、どうやら口で言っても分からないようだな。だったら、

「くたばれです!(本気のパンチ)」

「(プルルル)もしもし。店長お疲れ様です。実は千屋君がもうバイトしたくないって――」

「すみませんでした。だから店長に電話はしないで下さいお願いします!」

 土下座。ああ、僕って弱いんだな。

 ……こうして僕の女装バイト生活は続いていく。

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