Last phase-13
先制攻撃として、ボディーガードの一人の頭部を両断しようと切りかかる。
振り下ろした刃はしかし、男が両腕をクロスさせるようにして防御した。
「……!」
金属音が鳴り響き、私の斬撃は防がれる。
それと同時に、私の『眼』が迫る危機を捉える。
バックステップの要領で距離を取ると、私の頭部があった場所に、白銀の刃が横切る。
ガードしていた方とは別のボディーガードの腕が形状が変わり、鎌のようにそれを薙いだのだ。
察知が遅れていたらと考えるとぞっとする。
状況は相変わらずだ。
最悪。
ただでさえ厄介な敵が二体もいる。
「なかなかの苦戦振りだな。あの鬼道正義なら、もっと的確に始末していただろうがな」
淡々と、岩國が口を開く。
知った口をきくな、父の仇が。
「そもそも、私が好き好んであの男を殺したと思っているのか? それはお門違いだ。私はあくまでもこの国の国益のために尽くしているに過ぎない。おまえの短絡的で蒙昧なイメージと一緒にするな」
黙れ。
「ああ、確かに、私はあの男、鬼道正義を使って当時の『闇』のメンバーを殺害させ、最後にあの男を処刑した。だが、勘違いしてもらっては困る。これは、あの男が望んだことだ」
黙れ。
父が、臨んだ? 自分の死を?
そんなわけがあるか。
思わず毒づきそうになるが、ボディーガードの攻撃がそれを許さない。
白銀の鞭が私目掛けて、縦横無尽に迫ってくる。
「……っ!」
歯を食いしばって刀で受け流すが、それでも受けきれなかった。
肩や足を、銀色の閃光が切り裂く。
深手ではないが、それでも動きを鈍らせる分には十分かもしれない。
その程度の熱と痛みが、私を襲う。
だが、攻撃の瞬間というのは、同時に隙でもある。
痛みを堪えて銀色の鞭に刃を走らせる。
足に滲むような痛みが走るが、それを堪えて刀を振るう。
男の首めがけて縦に刀を振るい、バイザーごと両断した。
煙と電流を上げて水銀にどろりと戻る。ここまでやって、ようやく一機だ。
まだ、もう一機残っている。
無理矢理硬い水銀を斬った、いや、叩き割ったからか、刀身が僅かに刃こぼれしている。
特殊な合金でできた『時雨』を刃こぼれさせるなんて、どれだけの硬度を持っているんだ。
「ほう、あの試作機を一機屠るとはな。素直に賞賛しよう。だが、まだ後一機残っているがな」
そう言って、岩國がようやく腰を上げた。
「だが、その欠けた牙で、どこまで戦える?」
その言葉とともに、もう一機の水銀ボディーガードが向かってきた。
戦いはまだ、終わらなさそうだ。
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