Last phase-14
時間は遡る。
「……」
「……ちょっ、どうなってんの!?」
『JSA』事務所で、ネットの中継を視ながら慌てた声を上げるのは瀬見だ。
映るのは、防衛省の正面で起こっている戦闘。
本来はこういった緊急事態を未然に防ぐために組織された『JSA』の存在意義すら疑う光景が、大型のモニターに移されている。
「……」
風間は、冷静に画面を見つめる。
注目しているのは、機動隊と戦闘している者達の動きだ。
圧倒的に組織だった、訓練された者達の動き。
決して隊員に致命傷を負わせることなく戦っている彼等の陣頭指揮を取っていると思しき男に、風間は見覚えがあった。
上条仁助。
指定暴力団『八条会』の若頭にして、かつて風間と死闘を繰り広げた間柄の人物だ。
あの夜の戦いが、彼の長ドスの斬撃が今、鮮明に思い出される。
「……『八条会』か。彼等は穏健派だったはずだけど、妙だね」
さらりと言ってのけるのは、この事務所の所長の桔梗院歌留多だ。
仮面の奥で何を考えているのか今一瀬見もわからないが、考えている素振りから、この状況を分析しようとしていることは確かだ。
「妙?」
「うん。前にも言ったけれど、『八条会』は本来穏健派だ。余程の理由がないとこんな大それたことはしない。しかも、戦闘に長けた連中を招集して、だ。何か目的があるとみて、間違いないよ」
「目的って?」
「それはわからない。それはともかく、これはある意味チャンスだね」
「……? チャンス?」
瀬見と風間の頭に疑問符が浮かぶ。
こんな非常事態にも関わらず、それをチャンスという彼の意図がわからないのだ。
「ああ、チャンスだよ」
そう言うと、彼はいつもの城スーツの上にトレンチコートを羽織る。
「これで、正面から堂々と防衛省に踏み込む理由ができただろう?」
「……!」
瀬見は目を見開く。
確かに、この緊急事態なら『JSA』が動く理由にはなる。
それは同時に、この防衛省にいるであろう鬼道佐久弥を探す機会でもあるのだ。
「セミちゃんは動かせる仲間にすぐに招集をかけて! 風間君は先んじて防衛省に向かって機動隊の援護と同時に連中の足止めをお願い!」
一頻り指示を出した所長は一人、事務所を後にする。
「……人に指示だけ出しといて消えるとか、酷くね、あいつ?」
ぶつくさと文句を言いながらも、瀬見はすぐにメンバーに連絡を入れる。
事態の収集と、同僚の安全確保のために。
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