Last phase-11

 銃声が響く。

 憎き仇敵の頭を吹き飛ばさんと放たれた弾丸はしかし、その目的を達成することは叶わなかった。

「……っ!?」

 阻んだのは、刀を掴んでいた男だ。

 刀を掴んだままだが、それは異常な光景だ。

 肩から、鋼の盾が生えた。

 銀色に輝くその盾は、男のから主を守るように生えてきて、9 mmパラベラムを弾き飛ばした。

「先程、技術が盗まれた、という話をしたな? その一時のものが盗まれただけで脅威に思うものか。こうして、さらに発展しなければ本格的な脅威にはならない。特に国防に関してはな」

 いまだ冷静な顔でデスクに腰かける岩國が重々しく語る。

「流動的な金属である水銀を操作することで、変則的な動きを可能にしたサイボーグだ。盗まれた機体と一緒にするな」

「……!」

 思わずバックステップで距離を取る。

 瞬間、私が立っていた場所に銀色の刃が過ぎる。

 サイボーグの男から放たれた、水銀が刃物の形状に変化したものだ。

 あそこに立っていたら、首と胴が分かれていたな。危なかった。

「……先に、こいつらを倒さないと、ダメか」

 そして私も、目の前のサイボーグを倒すため、『眼』を使う。

『Open the eye』

 目を起動する。

 すると、サイボーグ達の共通点が見えてくる。

 あのバディーガードのサイボーグ二体の頭部の、バイザーの奥が、高熱を発している。

 サーモセンサーが感知した情報から、おそらくあそこがコア部分だろう。

「……ほう。ドクターの発明はそれか。大層気に入っていたが、まあ、壊されても致し方ないだろうな」

 岩國はいまだに冷静に私を観察しているらしい。

 私の『眼』を見ても驚きすらしていないところを見ると、私の情報などはすでに把握済みなのだろうか。

「……あなたは、戦わないの?」

 微動だにしない男に、尋ねる。

「私は指揮官だ。自衛をすることはあるが、基本の戦闘はまず部下がやる。その戦況に応じて戦術を考えることが、私の仕事だ」

 なるほど。なら、今相手にするべきは液体サイボーグ二体ということか。

 なら、さっさと片付ける。

「……」

 三尺刀を、上段に構える。

 いつでも刃を振り下ろせる攻撃的なスタイルだ。

 これでいい。

 あと、少しなんだ。

 目の前にいる、父の仇。

 こいつを、討つ!

「……!」

 覚悟を決めた私は、立ちはだかる二人に突撃していった。

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