Last phase-2
私立『篠谷学園』。
一週間前の修学旅行の熱も冷め始めた頃、同級生が失踪しているクラスでは、すでにいつもの日常が始まっていた。
彼女がもともと人付き合いをおろそかにしていたこともあるが、クラスメイトからしてみれば、同じクラスというだけの『赤の他人』を気にする生徒はほとんどいなかった。
教師側としても保護者らしい男から連絡があったこともあり、普段通りの職務をこなしている。
こうして、学園ではいなくなった少女のことなど気にもせず、いつもの日常を謳歌していた。
ある、一部の生徒を除いて。
「上条さん!」
その一部の少年、嘉村真一はクラスメイトでありアイドルの上条ちひろに声をかける。
「……」
またか、とでも言わんばかりにため息をつき、彼女は視線を向ける。
「……なに?」
「今日こそ、教えてほしいんだ。鬼道さんの行方について」
嘉村の問いは、ちひろにとっては予想通りだった。
この連日、彼は彼女に対して尋ねることはこればかりだ。
アイドルの仕事で投稿していない日を除き、彼は必ず彼女の下を訪れては、この問いをしている。
そして、決まって返す言葉は、こうだ。
「……知らないよ☆」
わざとらしく突き放すちひろ。
彼の性格上、必ず聞いてくるとは思っていた。
実際、彼女も鬼道佐久弥の行方は心当たりがあるが、実際のところはどうでもいいとも思っていたために、ちゃんとしたことは不明なままでいた。
だが、当てがあるのは事実だ。
彼女のいる組織『八条会』の情報網を使えば、簡単にはいかなくとも、行方不明の少女を探すことは可能だろう。
それでも彼に答えないのは、佐久弥が彼に気にされていて、それが気に入らない、というのもあるのだが。
「知らないって、そんな……」
「だって、あたしはたまたま鬼道さんと修学旅行中に同じ部屋だったってだけだよ☆ それなのに、あたしが知ってるなんておかしいと思わない?」
「……嘘だ」
「どうして?」
「だって、先生から聞いたよ。部屋の巡回に行ったら上条さんが出てきたって。でも、部屋までは入ってないとも言ってたよ。つまり、この時に本当に鬼道さんが部屋にいたかどうかはわからないってことだよね?」
「でも、本当に寝ていたかもしれないじゃん?☆ 単にわからないってだけだよね?」
「……」
黙ったまま、何も言わなくなった嘉村。
その内心は、このままではらちが明かない。
最悪の手はあるが、それを切り出そうか悩んでもいたのだ。
「話はそれだけ? それじゃ、用事あるからもう行くね?☆」
横ピースを決めて歩き去ろうとするちひろ。
このままでは、本当に何もわからなくなってしまう。
「……わかった。じゃあ、クラスメイトの上条さんに聞くのはやめるよ」
「? わかってくれたなら……」
「なら」
そして、意を決したように口を開いた。
「なら、『八条会』の上条さんに、聞きたいんだ」
「……!?」
ちひろの顔は、驚愕の色に染まった。
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