4th phase-9

 その光景は、さながらパニックホラーのような光景だった。

「いやああああああああああ!」

 悲鳴を上げる女性、グロリアは、自分の腕に換装したガトリングを打ち続ける。

 目の前の、巨漢に向けて。

「……」

 そんな弾丸の嵐の中を意にも返さぬくらいに、無言で近寄る巨漢、紫苑。

 弾丸は紫苑の体に命中しているにも関わらず、全てはじき返され、地に落ちる。

「な、なんでよ! なんで効かないのよ!」

 何故弾丸の雨が効かないのか理解できず、恐怖にかられるグロリア。

「……んなよ」

「……え?」

 一瞬、紫苑の言ったことが聞こえず、グロリアは思わず声を漏らす。

 そして、

「……なめんなよ、糞アマぁああああああ!」

 咆哮が、響く。

「……!?」

「んな豆鉄砲、あたしに効くかよあほんだらぁあ! なめんじゃねえよコラぁ!」

 激昂する紫苑。

 特殊な合金で造られた紫苑の体は、ミサイルくらいでなければ傷を負わせることができない。

 それほどの強度を誇る彼、ないし彼女の肉体を破壊できる兵器を、グロリアは持っていなかった。

「んじゃ、次はこっちの番だな」

「……!?」

 紫苑が言葉を発した瞬間、その硬質な腕がグロリアに迫る。

「……はやっ……!?」

 言葉が発音されるよりも速く、グロリアに紫苑のアックスボンバーが襲った。

 強靭で硬質な体から繰り出される一撃は、容赦なく彼女の鋼鉄の肉体を破壊した。

 そのままの勢いで紫苑は、グロリアを思い切り吹き飛ばした。

「……ふん!」

 彼女は何回転も地を転がり、壁も突き破った。

 勢いもそのままにグロリアは、地上7階から落下していった。

「……痛みを知りなさいよ。言葉で傷つく人だって、いるのよ」

 そうつぶやくと、紫苑は残りのジョーンを仕留めんとその場を後にする。

 紫苑が到着すると、そこにはジョーンを断頭したと思しき佐久弥と、護衛対象のコンバルトの姿があった。

「……そっちも終わったみたいね」

 紫苑が声をかけると、佐久弥が刀を納め、近寄ってくる。

「……油断はできません。少なくとも、あの二人は無尽蔵に来ます。警戒を解くわけには……」

「大丈夫よ」

 そう言って紫苑は、佐久弥の頭をなでる。

「あとは所長が何とかするわよ」

「……所長が?」

 訝しげな顔の佐久弥。

「ええ、そうよ。さ、あたし達は風間ちゃんと合流して引き上げましょう」

 そうはっきりと言う紫苑は、自身に満ち溢れていた。

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