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 それは夢もなにも見ない、……本当に深い眠りだった。自分の周囲に誰かの視界を遮ってくれる、……そして自分自身を守ってくれるバスの待合小屋の屋根と壁があるという状況が、木の葉に安心感を与えてくれたのかもしれない。……木の葉は、ぐっすりとその場で熟睡した。……そして目が覚めたとき、木の葉の周囲は真っ暗になっていた。それは真夜中の時間だった。木の葉は辺りが真っ暗になるまで、バスの待合小屋の中で眠り続けてしまったのだ。

 目が醒めると木の葉の頭の中はとてもすっきりとしていた。……そりゃ、これだけ寝れば誰だってそうなるだろうな、と木の葉は一人で考えて、一人で笑った。それからはっとして、自分の膝の上を確認すると、小の花からもらった小さな鉢植えは無事だった。それを見て木の葉はよかったと思った。木の葉の姿勢は眠る前とあとでまったく動いていなかった(若干、猫背気味になってはいたけど)。

 自分の寝相がそれほど悪くないことを、木の葉は自分でも知ってはいたけれど、こんなに動かないことは珍しかった。きっとこの小さな鉢植えを守るという意識だけは、木の葉の認識している普段の意識よりも、もっと深い場所にちゃんと残っていたのだろう。木の葉はなんだか、それが確認できて嬉しかった。自分が少しだけ、以前よりも『いい人間』になれたような気がした。木の葉はその場で「うーん」と言って、思いっきり背伸びをした。それから小さな鉢植えを大切に両手で持って、バスの待合小屋の外に出た。

 ……すると夜空は、満天の星空に包まれていた。

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