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 女の子が指差す場所には確かにバス停のようなものが立っていた。その隣には休憩用の小屋のようなものもあった。木の葉はそれらの建物を見て、あんなもの、さっきまであの場所にあっただろうか? と少しだけ首をひねった。「あのバスに私は乗るんだよ」と女の子は言った。「あれに乗るって、間に合うの?」と木の葉は言った。三人組の大人たちに追いかけられたり、突然、天気雨が降ったり、目的の猫を見つけたり、バスが来たり、いろいろと随分と急な話だと思った。「大丈夫。ちゃんと私たちが乗るまで待っていてくれるんだよ」と女の子は言った。そんなことがあるのだろうか? と木の葉は思ったのだけど、女の子は平然としていた。バス停のある場所にバスが到着するのとちょうど同じころ、三人組の大人たちが木の葉たちのところまでやってきた。

 その三人組の大人たちを待っている間に、女の子は先生たちの話、女の子の両親の話、そして猫の話などを木の葉にしてくれた。

 その話によると、女の子から先生と呼ばれる年老いた男性は、学校の先生ではなくて、どうやらお医者さんのようだった。しかもその先生は女の子の掛かり付けの担当をしているお医者さんだと言うことだ。そのお医者さんをしているという男性に女の子はこっぴどく叱られて、それから木の葉も同じようにこっぴどく叱られて、それから軽い嫌味を言われた。

 でも、そのお医者さんの先生に怒られたことを木の葉はとくに理不尽だとは思わなかった。自分のやったことは怒られて当然だと思った。木の葉がお医者さんの先生に怒られている間、その先生の背後には隠れるようにして女の子が立っていた。木の葉よりも先にお医者さんの先生に叱られた女の子はそういうことに慣れているのか、けろりとしていた。木の葉が怒られ終わると、女の子はすぐに木の葉のそばにやってきて、健康的な赤色をした舌を出してから、「ごめんね」と小さな声で木の葉に言った。その態度と言葉を聞いて、なかなかタフな女の子だなと木の葉は思った。

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