第49話 俺の周囲は休日も騒がしい
-side 田島亮-
「うわ、もう昼じゃねえか...」
本日は体育祭の振替休日である。先ほど起床し、枕元に置いている目覚まし時計を見ると時計の針は既に12時を回っていた。
完全に寝過ぎだ。もう半日終わってるじゃねえか。
「なんか腹減ってきたな..」
今日は母さんが仕事に出ており、友恵も弓道部の練習に行っているので今家に居るのは俺だけだ。つまり腹が減ったのなら近くのコンビニで何か買ってくるか、自分で何か料理を作るしかない。
うーん、外に出るのも面倒だなー。あんま料理得意じゃないけど適当に昼飯作るか。よし、チャーハンでも作ろう。アレなら簡単に出来る。
そして昼飯のメニューを決めた俺はチャーハンを作るために1階の台所へと向かった。
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「オーイ田島ー! オマエの部屋の本棚を物色しに来たアルー!」
「ダーリーン! 遊びに来たよー!」
「田島くーん! こんにちはでありますー!」
昼飯を食べ終わり、2階の自分の部屋に戻って漫画を読んでいるとウチの玄関の前から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
...いや、よく考えたら聞き覚えなんてないかもしれない。他人の家の玄関の前でインターホンも鳴らさずに家の中に居る人に向かって大声で呼びかける人たちなんて俺の知り合いには居ない。うん、一瞬彼女たちの声に聞き覚えがある気がしたけどきっと俺の勘違いだったんだろう。
...よし、居留守を使おう。
「ダーリーン!」
「田島ー!」
「田島くーん!」
しかし俺の返事がなくとも玄関前に居る新聞部3人組は大声で俺を呼び続けている。
はぁ...このまま放っておいたら多分近所迷惑になるよな...
「家に入れるしかないか...」
そして一瞬で居留守を諦めた俺は突然やってきた新聞部3人衆を迎えに玄関へと向かった。
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3人を家の中に入れた俺はとりあえず自分の部屋に彼女たちを招くことにした。
「おー! 田島くんのお部屋結構広いのであります! しかもテレビもあるのであります!」
「本がいっぱいあるネ! 早く読みたいアル!」
「さーて! ダーリンは部屋のどこにエロ本を隠してるのかなー?」
「とりあえずその辺に適当に座ってくれませんか...」
アンタらマジでいつも元気だな。昨日の体育祭の疲れとか無いのかよ。あとエロ本探すのはマジでやめろ。
「あのー、新聞部の皆さんは何故いきなり俺の家に来たんですかね...」
「オマエが昨日『好きなだけラノベや漫画を読んでもいい』って言ったからアル」
「な、なるほどね...」
いや、まあ言ったけど! まさか今日来るとは思ってなかったわ!
「部長が田島くんのお家の場所を知っていたので良かったのであります!」
「うふふ、ダーリンのお母様と妹ちゃんが家に居ないこともちゃんと把握してたわ!」
毎回思うけどアンタはどこからそんな情報得てるんだよ。
「はぁ...まあ事情は分かりました。でも次からは前もって俺に連絡しといて下さい。さすがに突然来られると困るので」
「ご、ごめんなさいアル...」
「申し訳ございませんでした...」
「ダーリンごめんね...もう少し気を遣うべきだったよね...」
ちょっと待って。いきなり3人同時にシュンとするのやめて。どうしていいのか分かなくなるから。
「ま、まあ別にウチに来てくれるのが嫌というわけではないですから。とりあえず今日は好きなだけ俺が持ってる本読んでもらって大丈夫です」
「やったー! ダーリンはやっぱり器が大きいわね!」
「わーい! 早速読むアルー!」
「まずは『陶芸戦士ドロンコマン』を読むのでありますー!」
アンタら変わり身早すぎるだろ! それと『陶芸戦士ドロンコマン』なんて本はウチには無いからな!
そして新聞部3人衆は一斉に俺の部屋の本棚を物色し始めた。
はぁ...この人たちの相手するのってやっぱ疲れるな...
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新聞部員たちは最初は騒がしかったが、本を読み始めると皆大人しくなった。いつもは騒がしいこの人たちが黙っているとそれだけで違和感がある。
現在俺と新聞部員の3人は部屋で寝転がって各々漫画やラノベを読んでいる。本を読み始めて1時間ほど経つのだが、読み始めて以来俺たちには会話が一切無い。新聞部員の本を読む時の集中力が思っていたより凄まじい。
しかし俺だけは本に集中することができていない。
その原因は明白だ。自分の部屋に無防備な状態で寝そべっている女の子が3人もいるのである。最初は突然3人が家に襲来したことに驚いて全然そんなこと意識していなかったけど冷静に考えると今の状況は思春期男子的に結構ヤバイ。なんかいい匂いするし。
新聞部の3人は性格のクセが強いが、その点を除けば3人とも普通に美少女である。黙っていれば普通にかわいいのだ。
そしてなぜか今日は3人とも丈が短いスカートを履いている。
そんな格好で部屋に寝転がられるとどうしてもチラチラ彼女たちの方に目が移ってしまう。読書に集中なんてできるわけがない。俺は悪くない。俺の目を引きつける絶対領域が悪いのだ。見えそうで見えない。だがそれが良い。
「オイ田島、この本の続きが読みたいアル。どの辺探せば見つかるアルか?」
「え!? ああ、それの続きなら本棚の1番下の段にあると思うよ」
「オマエなんでビクついてるアル? まあ場所を教えてくれたことには感謝するアル」
煩悩にまみれている最中に突然リンさんに話しかけられて驚いてしまった。いかんいかん、煩悩退散煩悩退散。
「オイ田島、本と本の間に何か挟まってるけどコレ何?」
煩悩を追い払っていると再度リンさんに話しかけられた。彼女は本棚の下の段を指差して首を傾げている。
リンさんの指の先にあるのはテレビ用のゲームソフトだった。おそらく以前床に落ちていたのを俺が拾ってそのまま本棚に放り込んだのだろう。我ながら大雑把な性格だなオイ。
「それはゲームソフトだよ」
「それは見れば分かるアル。ワタシが気になったのはゲームのタイトルの方ネ」
「タイトル? ごめん、ここからだと遠くてタイトル見えないや。どんなタイトルか教えてくれる?」
「『らぶ☆らぶハーレム生活』」
「そんなゲーム買った覚えないんだけど!?」
「でもこのゲームにはそう書いてあるネ」
「マジか...」
いや、マジでそんなゲーム買った覚えはない。タイトル的にギャルゲーだろうけどいつ買ったんだろ...
...あ、思い出した。コレ春休みに隣町の中古ゲームショップ行った時に買ったやつだ。300円で売られてたからゲーム内容よく確認せずに衝動買いした覚えがある。家に帰ってネットの評価見たらストーリーがボロクソに叩かれてたからプレイする気失せてそのまま放置してたやつだ。
「これどんなゲームアルか?」
「多分ギャルゲーかな」
「ギャルゲー...?」
「簡単に言うと恋愛シュミレーションゲームだね。ヒロインと会話して仲良くなって関係深めていくって感じかな」
「面白そうネ。ちょっとやってみたいアル」
「今からギャルゲーやるのは構わないけど別のタイトルにした方が良いと思うよ? 多分それクソゲーだから」
俺がそう言うとベッドを占領していたアリス先輩が突然立ち上がった。
「クソゲー! いいじゃない! やりましょうよ!」
おい、アンタは突然何を言っているんだ。
「あのー、アリス先輩? ネットの評判見る限りコレ多分ガチのクソゲーですよ? なんでやる気になってるんですか?」
「実は私クソゲーマニアなの! クソゲーというワードを聞いたらやらずにはいられないの!」
マジか...まさかアリス先輩にそんな趣味があったとは...
「まあこのゲームやるのは別にいいですよ。でも面白くなかったらどうするんですか? たまーに救いようがないクソゲーとかあるじゃないですか。俺の勘ですけどこのゲーム多分救いようがないパターンですよ」
「そこは心配しなくても大丈夫! 本当に全然面白くなかったらネットで叩きまくってスッキリすればいい!」
アンタ意外と陰湿だな...
「アリス先輩はこう言ってるけどリンさんと相川さんはどうする?」
「ワタシもそれやりたくなってきたアル」
「ワタクシもリンと同意であります!」
2人ともアリス先輩と同意見か。まあ皆がやりたいって言うならこのゲームやってもいいかもな。俺もストーリーのどんな所がクソなのか気になってきたし。
「じゃあやりますか」
「わーい! 皆でゲームでありますー!」
「ワクワクしてきたわ!」
「田島! 早くゲームをセットするアル!」
あのー、クソゲーに対する期待値高すぎません? 後悔しても知りませんよ?
まあ3人とも楽しみにしているみたいだしさっさとゲームをセットするとしますか。
そして俺はやたら期待値が上がったクソゲー、『らぶ☆らぶハーレム生活』を取りに行くために本棚へと向かった。
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