とある生徒は再会する
「最後はカケルのクラスか~。今日も売切れてねーと良いけど」
「ああ、確かに、昨日は材料切れて販売中止したんでしたっけ。
ええっと3年5組は…4階ですね」
「おっし、行くかあ!」
人ごみの中、大きく遠回りした私たちは4階へ向かう。
灯ちゃんの長いポニーテールが人混みの中でちらりと揺れる。
そのショッキングピンクのおかげではぐれる心配がない。
私はこっそりと安心して後ろをついていった。
―――――――――――――――
「あ、菜子さん!灯さん!」
4階の階段近くにある教室。
3-5の数字を風船で表した装飾を見ていたら、聞き慣れた声が私たちを呼んだ。
振り返ると、いつもと違う服装のカケルくんがこちらに向かって歩いてくる姿があった。
高等部の制服であるチェックのパンツに白いポロシャツ、いわゆるクラスTシャツには、青、赤、黄色でカラフルなデザインが施されていた。
星はハートの絵柄が並び、
いつもと違った可愛らしい格好に灯ちゃんはさっそくいじりにかかった。
「よおカケルぅ~!かわいいカッコしてんじゃ~~ん!」
「ちょ、これはクラスみんなで着ててっ…て灯さんも毎年着てたじゃないですか!」
「似合ってるぞ、カケル~」
「ふふ、いいTシャツだね」
灯ちゃんた楽しそうにカケルくんの頭をわしゃわしゃと撫で回す。
7係で働き始めてから何度もされてきて慣れてしまったカケルくんは、不満そうだがそのまま好き放題されている。
そんな騒がしくなった私達になんだなんだと同じTシャツのクラスメイトがわらわらと集まってきた。
「瀧澤くん、もしかしてこの人たちが…?」
おさげの女の子に声をかけられて、カケルくんはそうだよ、と珍しく砕けた口調で返した。
「イチゴのシロップを集めてくれたのは僕の上司と先輩たちなんだ」
ふいに昨日の記憶が脳裏に蘇った。
急に今関さんに頼まれて、カケルくんの寮までに荷物を渡しに行ったっけ。
「学園祭運営委員の加藤ですっ、シロップ、本当にありがとうございました!」
「いえいえ、お役に立てたみたいでよかった」
「あの、良かったらご馳走させてくださいっ」
「えーいいよいいよそんなのはさー!」
カケルくんをいじり倒し終えた灯ちゃんが加藤さんの前に来た。
加藤さんは灯ちゃんの派手な格好に驚いた顔をして、でも…とおさげを揺らす。
灯ちゃんは笑顔でぽんぽんとその頭を撫でた。
「出店ランキング、売り上げ額で決まんだろ?
目指してなくっても貢献させてくれたっていいだろー」
「え…あ、ありがとうございます」
「私たちは特殊治安局 カケルくんと同じ部署の吉川と、結城さん。
「はいっ!ありがとうございます!」
加藤さんは嬉しそうに中へどうぞ、と扉を開けてくれた。
早速中へ入ると、源川さんのクラスと同じように机を4つ並べてテーブルクロスを敷いたイートイン席があった。
だけれど教室の装飾は、綿ではなく神社を思わせるしめ縄だった。
なるほど、3年5組で、巫女さんね。
中で店員をしている生徒たちも同じような巫女服を着ていた。
空いている席に案内してもらい、懐かしい椅子に座ると加藤さんは教室の端をめがけて声をかける。
「藤沼せんせー!」
あ、と。
隣から灯ちゃんの小さい声が聞こえた。
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