邂逅

午後は昨日よりも温度があがり、少し暑いくらいだった。

さっきまで元気だった灯ちゃんは、だんだん溶けていくように力を無くしている。

途中で飲み物を買っておいて正解だったかな。


金田山は頂上を中心に緩やかな坂をぐるぐる回りながら登ってく構造になっている。

頂上を目指すだけで360度それぞれの景色を見られるので、紅葉シーズンが一番にぎわうらしい。

今は緑の葉が生い茂る季節なので、その景色は想像だけに留まった。



「おーおーおー!」



しばらく歩いていると、来てる、来てるううと突然声が聞こえた。

元気を取り戻した灯ちゃんは、周りに浮いている符の反応を楽しんでいる。

のぞき見ると、文字の周りに模様が現れ、一部赤く染まっていた。

火の符術が反応しているんだろう、私の目にも赤い縁がよく映るようになってきた。



「まだ日が落ちるまで時間があるのに、反応してるってことは…」

「昼間もここに居るっつーことじゃね?」

「やっぱり、でもどこにいるんだろう…気配は強くなってるけど…」



ペットボトルのお茶を飲んで、私たちは灯ちゃんの符の反応を頼りに歩みを進めていった。



反応が濃い方向に進みながら歩くこと5分程度。

突然灯ちゃんが立ち止まり、眉間にしわを寄せた。

睨む先を見つめると、複数の赤い縁が一気に暗い1本の赤色へ収束していく。



――近い!



私は咄嗟に灯ちゃんの前に出て、腰に貼っていた「封」の符を触る。

符が光った瞬間に顕現した白い刀に手をかけて、私は茂みをじっと見つめた。


ごそ、ごそごそ、と草木が異常な動きを見せる。

心臓や血管がどくどくと音を立て始めたのを感じる。



やがて大きな音をして現れたのは―――――真っ黒こげの男だった。





「あのー、すみません、怪しい人じゃないんです…」



顔が真っ黒すぎて表情はわからなかったが、とても申し訳なさそうなひ弱な声だった。

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