符術と縁と件の火の渦
金田山の入り口で、灯ちゃんは持っていた鞄からはがき大の白い紙と筆を取り出した。
慣れた動作で1枚ずつ文字を書き込んでいく。
筆にはインクも何もついていないのに、白い紙—――
符術、体内外の魔力を利用する術。
筆を通して自身の力を込めることで、紙を媒体に様々な術を使うことができる。
私は残念ながら符術はほとんど使えないので、黙って筆の動きを見ていた。
少しして、灯ちゃんは10枚近くの札を空へ放り投げた。
紙は落ちることなく黄色のオーラをまとって飛んでいく。
確か「探知」の符術だったかな、符術が使われた痕跡を追うのは現地調査の基本だからね。
「菜子っちはどう? 『縁』見える?」
「うーん…」
私は目をつむり、集中してから目を開いた。
きらきらと様々な色が視界に飛び込んでくる。
それはよく見るとすべて糸。
ふわふわと風で飛んでいきそうな蜘蛛の糸のようなそれは、とある特殊能力者しか見えない。
「
そしてこのふわふわした糸たちは――すべて「縁」。
万物の因果を目視できるのが私の力。
うーん、屋外だからか縁の糸が多すぎてよくわからないな…。
山は自然の一部であり、信仰の対象となることが多い存在だから、人だけじゃなく動物や植物にも繋がりが強い。
その証拠に小さな山とは言え無数の糸がふわふわまとわりついていて、火の渦につながる縁がどれだかわからなかった。
「縁が多すぎてどれがどれだか…」
「ま、だよねー」
灯ちゃんはケラケラと笑った。
その後すぐに戻ってきた符たちは、何も探知できなかったこと表していた。
ひとまず私たちは、目撃者の元を訪れて情報収集することにした。
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