主人公を殺す主人公
夢見 夢
終わりの始まり
第1話 プロローグ
この世界に生きる意味など果たしてあるのだろうか。
楽しみも面白みもなく唯々繰り返される日々。
そこには価値も存在意義もない。
そもそも、そんな刺激のない日常を『生きている』ことと認識しても良いのだろうか。
例えば、学生。
興味のない授業を受け、明確な未来設計も夢もなく、普段と何一つ変わらない日常を平然と過ごしているだけの生活。
例えば、社会人。
同じような仕事を約八時間行い、やりたくもない残業をさせられ、疲れた体を引きずりながら家に帰り、眠りにつくだけの生活。
しかし、まあ、それだけなら、まだマシなのかもしれない。
そう。
この世界は『つまらない日常』と『不条理』や『不平等』の元、構成されているのだ。
何か悪いことをしたわけでもなく――意味もなく陰湿な虐めやパワハラを受け、生きる気力をなくしたり…。
だからといってストレスが溜まらないはずもなく――聞きたくもない先輩や上司からの愚痴を聞き、機嫌を損ねないように神経を擦り削ったり…。
他人のために偽りの自分を演じ――第三者の目が気になって本音を押し殺し、仮面を被りながら他者と接したり…。
つらい現状から目を背ける――自分の趣味に没頭して一時的に今を忘れ逃避したり…。
それが『現実』だった。
辛いことがあっても辛いとは言えず、ポジティブ思考を余儀なくされる。
我慢することが良いこととされ、それができなければ批判される。
何をするにも他人と関わる必要があり、それが原因で『人生の歯車』が狂い、乱れ、どうしようも、どうすることもできなくなり『心の殻』に引き籠ってしまう。
再度問おう。
この世界に生きる意味など果たしてあるのだろうか。
――さて。
ここに独りの少年がいる。
いや。
いた、と言うべきか
そう、彼――
しかし、動機が見当たらない。
虐められていたわけでも体罰を受けていたわけでもなく、虐待をされていたということでもない。かと言って、辛いことがあったわけでも『死』を選択してしまいそうな出来事があったわけでもない。
第三者から見ても何かがあったようには感じら取れなかったし、自殺する直前まで変わった様子はなく普段通りに学校生活を送っていた、と言う。
本当にどうして自殺をしたのかが不思議だった…。
上内里留――十六歳。高校一年生。帰宅部。
黒い髪で死んだ魚のような目をしている。
それくらいしか特徴は無く他はいたって普通で、特に目立つ少年ではなかった。
――では。
ここまでがプロローグ。
物語の導入部分であり、物語に入る前の事前準備。
そのせいか多少退屈であったであろう。
ならば。
ここで一つ。
ちょっとした面白い話をしよう。
現代には『死後の世界』というものが存在していると考えられている。
極楽浄土だの天国だの地獄だの、昔の人間がわざわざ『生の先まで想像した世界』なのだが――。
――もしもその死後の世界というものが他の並行世界。
即ち――異世界だった場合どうなるのだろうか。――
誰も想像ができず予測も不可能で期待が溢れる。
だからこそ『憧れ』、『欲する』それらを。
一般的で。
世俗的で。
普遍的で。
表されるその言葉。
『───。』
さあ、全ての定跡を狂わせろ。
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