第116話【一筋の光】
「ケント!!!!!!! あんたふざけてんの!!!!!!!!」
「い、いやそれはこっちのセリフだ! あいつに騙されたんだ。洋介に。俺は被害者だ。だから、ちょ、ちょっと落ち着け。」
だ、だから本当に、そんなにまた怒鳴らないでくれ。
耳が、というかスマホが壊れる......ミキ。
くっ......。
「な、何が被害者よ!さっそく動画見たわよ。あんなにキレキレなダンスを踊っていた男が騙された? あんなの相当練習しないと踊れないわよ!てか、ノリノリだったじゃない!」
ノ、ノリノリ?
「いや、ほんとに急に洋介にコンサートに連れていかれて2時間ぐらいで振り付け覚えろって言われて、気が付いたら舞台にいたんだよ。本当だ。信じてくれ。俺は被害者なんだ。な、ミキ!」
「に、2時間?嘘も大概にしなさい!!そんなわけないでしょ!!!!!!」
「い、いや本当なんだって......。」
マジで本当。何で信じてくれない。
「ね、ねぇ! それより結局ジェニーズに入っちゃったの? ケント!? ねぇ!どうなのよ!」
う、また耳が......
ほんと鼓膜がやばいな......。
落ち着けって言ってるのに何で逆に音量が上がっていくんだよ。
「いや、入るわけないだろ。」
「じゃあなんであんなところに......。」
「だからさっきから言ってるけど、お前の弟の洋介に騙されたんだよ! コンサート行こうよって誘われたら普通は観る方だと思うだろうが!なんで出る方なんだよ!」
ほんと何でだよ。
あの後帰ってからすぐにその洋介からは電話がかかってきてめっちゃキレられたし......。
おかしいだろ。キレるのはどう見てもこっち。
すぐに戻ってきてだ? 誰が戻るかよ。
綺麗に無視してやったけど。あいつは本当に何考えてんだ。
ほんと着信がしつこかった。
何か知らない番号からも交互にかかってきてたし。
まぁ俺は知らない番号からの着信は取らない主義だからそれも無視したけど。
それに思い返せば何か柊さんところの社長のおっさんからも着信がしつこくあったな。当然無視だけど。
あのおっさんからの着信とか絶対にややこしいことだからな。
絶対出ない。
あろうことかSNSとかでは『田中王子、ジェニーズ入所!』とかデマが流れてるしよ。
いやいや、絶対にないから。
「じ、じゃあ本当にジェニーズに入るつもりはないの?」
「だから絶対にないって.....。」
「ま、前の時みたいに変な書類にサインしたりとかは.....。」
「してない。してない。本当にない。」
俺もそこまでバカではない。
今回ばかりは世間がどう言おうが俺には関係ない。
「な、ならまぁ許すけど......。」
許す?
それに今度は急に何でそんな小さな声で......。
「と、とりあえず洋介は私が姉としてちゃんとボコボコにしておくわ。ほんとあいつは勝手なことを.......。」
「あ、ああ頼む。」
今回ばかりは本当に姉として教育をしておいてくれ。
メタメタにな........。
ほんと大変な目にあった。
「じゃ、もうすぐ仕事だから。えーと、今度の練習は明後日ね。今度こそビシバシ行くから覚悟しておくように。ふふっ」
明後日.....って確か田中くんや山本とも練習があった気が。
「あ、ミキ。明後日は......」
って、切れた........。
「はぁ.......。」
やばい。こんなの身体持たないぞ。
てか、ほんと何で俺がドラマなんて......。
こっちはどうにかならないのかよ本当に。
真剣に演技なんてできないぞ俺。
って、今度は渋谷さんからline.......。
一体何なんだ。
ほんと溜息しか出ない。彼女のことだ。どうせまた......って
え?
「う、嘘?」
『ねぇ間宮健人が今度出るって騒がれているドラマ。パパの力で別の人にキャストを変更してもらえるかもしれないんだけど。どうする? 以前に確か出たくないって言ってたわよね。あなたしだいでは、私もパパに本気で掛け合ってあげるわよ?』
「.........。」
え? ま、マジ?
渋谷さんそれマジか?え?
やばいやばい。
突然俺の前に現れた一筋の光。
ほんと突然すぎる。
今度は良い意味で超サプライズ。
渋谷さんのお父様なら本当にどうにかできそう。
本当に。
こ、こんなの答えは決まっているじゃないか。
俺はすぐに彼女に返信する為のメッセージをスマホに打つ。
やばい。本当にやばい。
渋谷様。
あなたは神か.......。
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