第112話【団欒?】
「お、お母さま。本当に美味しいです。このお料理」
「もー、そんなお世辞はいいわよ。それよりまさかミキちゃんがまだうちの健人と関わりを持ってくれていたなんて。おばちゃんびっくりよ。今も一緒に食卓にいることが信じられない。だってミキちゃんもうすっかりテレビの中の大スターだもん。」
「そ、そんな。私なんてまだまだですよ。それより今度このお料理の作り方教えてください。本当に美味しいです!」
「........。」
お、お母さま?
何かかなり違和感があるぞ。その呼び方
昔からそんな感じだったけ? ん?
とりあえずミキに練習だと言われ色々と無茶な要求をされている最中に、母さんが俺達を呼びに来て今ここにいる。
助かったと言えば助かった......のか?
「あ!ほら!またミキちゃんが出てる。」
そう言ってテレビに向かって指をさす母さんの視線の先にはミキが人気番組でダンスを踊っている光景。
でも本当に、いつテレビをつけてもミキがいるな。
確か、この新曲もオリコン1位になったんだっけ?
「ふふ、不動のセンターね。ほんとにすごい。お父さんも残業じゃなかったらミキちゃんに会えたのにねぇ。」
「ねぇねぇ、ミ、ミキちゃん。後で友達にもサインとか.......」
「ふふ、遥ちゃん。もちろんオッケーだよ。私と遥ちゃんの仲じゃない。」
「や、やったー!」
そうか。遥も実際にミキと対面するのはかなり久しぶりか。
昔はよく遊んでもらってたっけ。
「それにしてもミキちゃんは何で今日は健人と?」
「え? お母さまは知らないんですか?」
「え? 何を?」
「ほら、健人くんが今度ドラマに出る話ですよ。遥ちゃんは知ってるよね?」
「え?おにぃのあれってやっぱり本当なんですか」
「いや、だから出るつもりはねぇよ。」
ないけど.......。
「健人が出るつもりはないって言ってもさ。何度も言ってるように世間がそれを許さないのよ。まだSNSのフォロワー数も伸び続けているじゃない。異常よ。異常。ねぇ遥ちゃん。」
「た、確かに。今思えば」
「へぇー、おばちゃん全然その.....えすえぬえす?とかはわからないけど、すごいじゃない。健人も芸能人になるの!?いいじゃないそれ!」
い、いや何でそんな楽観的。
でも今思えば確かに母さんは昔からこんな感じ......。
何というかちょっと、いや、かなり天然。あと機械に弱い。
ボクシングを辞めると言った時も普通に笑って了承してくれたっけ。
でも今回は......
「え?い、いいんですか?」
そうだよな。ミキもその反応だよな。
あまりにも軽すぎる。
それにもっと色々と疑ったり驚くのが普通なのではないだろうか
「いいじゃない。芸能人!すごい!」
あ、駄目だこれ。
芸能人という言葉に完全に興奮してる。
ここにミキがいることもでかいのだろう。
「そう言えば前に家に来ていた女の子もすごく可愛かったわね。もしかしてあの娘も芸能人とか?」
「ま、前に!?」
「そう。確か夏休みの終わりぐらいに連れてきてた。」
「........。」
前? あ、山本か。
「あー、確かおにぃと部屋で何か色々してたっけ。」
「へ、へ、部屋で色々!?」
「いや、あれは「ちょっとケント。色々って何!?」
いや、あの時は漫画を貸しただけ.....だったはず。
「いやだから「ケント? ちょっと練習に戻りましょうか?」
いや喋らせてくれよ。
あと何だその感じ。笑っているけど目が全く笑ってない......。
「さぁ戻りましょ? ケント」
気がついたら彼女の前の皿は全てもう空っぽ
いや、早いな。俺はまだ食べている途中......。
「って、おい。まだ「戻るわよ!」
な、なにをそんな強引な
「......。」
って、まじで戻るの?
ご飯.......
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