第113話【洋介と突然】
いやいやいやいやいや、何だこれ。
昨日もミキと色々と大変だったけど。
どういうことだ洋介......。 本当にどういうことだ。
今、俺の目の前にいる洋介は昔馴染みのミキの弟だ。
弟なんだけど.......
久しぶりに俺の事を誘ってきたと思っていたら本当に何だこれ。ちょっと意味がわからなさすぎる。
休日だし、何かのコンサートって聞いていたから面白くなくても座ってボーっとしておけばいいやと思って着いて来たけど.......は?
「じゃあ皆、本番が始まるまであと2時間ぐらいだから。とりあえずこれおさらいしておいて。」
そう言ってダンディな大人の男から手渡されたのは、よくわからないけどダンスの振り付けが詳細に記載されたプリント。
いや、は?
「ケント君、今回の分の振り付けは簡単だし俺が教えるから頼むよ。」
「いや、おい洋介。これ何だよ.......。」
「ん? ジェニーズのコンサートだよ。俺、ジェニーズjrだから。」
「は? そうなの?」
し、知らなかった。いつの間に。まぁ顔的には全然ありえるけど......。
って今はそんなことはどうでもいい。
そ、そっち?
「な、何で俺も出るみたいな感じになってんだよ。お、おかしいだろ。俺は帰るぞ。聞いてない。騙したなお前」
本当におかしすぎるだろ。
誰が出る方だと思うよ。
「まぁまぁまぁまぁ、そんなことを言わないで。本当にちょっとバックで踊ってもらうだけ。今回だけでいいからさ。割のいいバイトだと思って1回だけ。ね!お願いだよ。急にバックに欠員が出てさ。」
って、今度は誰だ。
急に俺の肩に手を回して話しかけてくる、かなり年配のおじさんが隣に。
マジで誰?
「ケント君。そういうことだからごめん。俺を助けると思ってさ。」
「いや、天下のジェニーズ。補充要因ぐらい星の数ほどいるだろ.......。」
「いや、それが急すぎて集まらなくてさ。」
いやいや、そんなわけないだろ。さすがに一人ぐらい......。
「本当に頼むよ。ちょっと後ろで踊るだけ。バックだから全く目立たないし。ほんと良いバイトだよ。一瞬踊るだけでこんぐらいもらえる。」
そう言って俺に向かって指を何本か立ててくる洋介。
え? 一瞬でそんなに?
jrってそんなにもらえるの? お、俺がネットで見たことのある相場と違いすぎるぞ......。
「それにあの『lucky.winds』の後ろで踊れるんだ。一生の思い出になれるよ!」
って、またおじさん。
何だめちゃくちゃ慣れ慣れしいぞ.....。
今日初めて会ったけど誰かを思い出す慣れ慣れしさ。
それにそんなラフな格好で.....本当に誰だ。
まぁ『lucky.winds』は確かにジェニーズの超人気二人組ユニットだけど......。
「頼む!ケント君。可愛い弟分の頼みだと思ってさ。」
いや......え?
本当に?は?
いや、でもダンスなんて体育の授業でしか......。
まぁ先生にキレが良いって褒められてことはあるけど、それでも普通に素人。
それにこんなに大きなところで.......
無理だろ。
「いや、ダンスとか普通に無理だし......」
jrといっても一応彼らはプロ。うん。無理だ。
「いやいや本当に今回のダンスは難しくないし、ケント君なら余裕だよ。何もバク転しろとか言ってるわけではないしさ。てか、めっちゃ運動神経いいしケント君ならバク転もできるんじゃない? まぁ今回はないけど。」
バク転か.....別にやれって言われればできなくはないけど。
「ほら、今から本番までちょっとだけだけどマジでケントくんなら余裕だから練習しよう。」
って、は? え?
何この感じ。
え? マジなの?
え? まずスタイリング?
は? え、ちょ.......
「嘘だろ?」
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