第110話【不意打ち②】


 「も、もしかして間宮くんは例のドラマの練習をしていたの........?」


 「........。」


 いや、あ、あれを見られていたのか........。

 さ、最悪だ。


 穴があったら絶対に入る。秒速で入る。

 最悪だ。最悪すぎる。


 とりあえず、山本のその質問に俺は無言。

 声がでない。恥ずかしかったり色々な感情が入り乱れすぎてもう喉が......。


 「間宮くん?」

 「い、いやドラマはべ.........。」


 いや........ドラマは別に関係ないと言おうと思ったけれど、ドラマ関係なしに田中くん達とあんなことをしていたら完全にヤバイ奴。ヤバすぎる。


 「ま、まぁそうかもな.......。」

 いまだに出るとは一言も言ってないし、アレは田中君に半強制的にやらされているだけ。でもここで彼女に答える言葉はもはやこれ以外にはない.......。見つからない。くっ。


 「やっぱりそうだったんだ。」

 「......。」


 最悪だ.......。

 いくら田中君が真剣に俺の事を考えてくれているのだとしても、もう絶対にやりたくない。絶対に。

 

 さっきから顔から火がでそう。本当にでそう。


 「ねぇ間宮くん。」


 「何だ.......」

 まだ何かあるのか?

 もし本当にあるのであればもう俺の心のエネルギーは完全にゼロ。

 さらにマイナス。


 「わ、私も.......」


 「..........。」

 どうした。急に下を向いて。


 「私も手伝おうか?」


 「え?」


 「ほら、その、やっぱり相手が男の子よりもさ。ち、ちゃんと女の子の方が

練習になると思うんだ........。それに私あのドラマの原作漫画ににすごく詳しいし。」


 ど、どういうこと。


 「じ、実際の相手は女の子だし。アレだとやっぱりね.....」


 ま、まぁそうだけど。


 「ねぇ。本当に私に間宮くんのこと手伝わせてくれないかな......。というか手伝いたい。いつも本当にお世話になっているし。」


 そして気が付いたら彼女の視線はまた俺に。


 「ねぇお願い。間宮くん。」


 え? いやよくわからないけど。


 な、何で俺がお願いをされているんだ。

 そんな真剣な目で.......


 「わ、私に間宮くんの力にならせて。私頑張るから。」


 い、いや......本当にこれはどういう状況?

 ってか、え? 頑張る?


 「わ、私、間宮くんが言うなら何でもするよ。本当に何でも.....。」


 え、な、何でも......。


 「........。」


 って、それは、た、田中君としている様なことを山本と......。


 い、いやいやいや、無理無理無理。


 「いや、それは.....ほらもう田中君がいるから。」


 って、え?


 するとすぐに彼女は俺に自らのlineのトーク履歴を見せつけてくる。


 「.........。」


 「た、田中君にはもう許可はもらっているよ。だから明日から、よ、宜しくね.....。」


 は、はい?


 って........

 な、何が『一緒に頑張ろうね!』だよ。


 おい。田中........。


 「じゃあ、そういうことだから。ま、またね。」

 「え、ちょ.......」


 い、行っちゃった......。

 気がつけば逃げるように山本は教室から退出。


 「は..........?」


 え、明日から?


 というか、田中君から許可をもらってるってことは既に知っていた......?

 ってか、そもそも田中君の許可って何?


 「.........」


 ん? え?


 駄目だ......また頭が


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