第101話【得体の知れない二人の男】


 く.......何で、何であいつ等がいるんだ。

 得体のしれないあいつ等が。


 そう言えばここの制服だったか.....くそっ

 しかもクラスまで一緒とは.......。


 俺の名前は頼本丈瑠。

 生まれてきてから一度だって喧嘩で負けたことなんてなかったし、こう見えて勉強だって一流。女に困ったこともない。

 何をやらせてもトップに立ってしまう神に愛された男。

 

 それが俺、頼本丈瑠......だったはずだ。


 前の学校でも、その前の学校でもそんな俺に逆らう奴はいなかった。

 まぁ色々と好き勝手にやらかしすぎてまた転校させられちまったけどな。

 

 でも親は金持ちだし、この学校でも好き放題してやろうと思ってた。

 世の中は俺を中心に回っている......はずだった。


 それが......何なんだあいつ等。

 あんな奴等いままでに出会ったことがない。


 異質中の異質。


 見た目は糞雑魚。ぱっと見では真っ先に俺の奴隷でおもちゃになる存在。

 そう思って昨日も当たり前のように、引っ越し早々暇つぶしに目に入ったこいつらで遊んでやろうと思っていた。


 それが、く......今もまだ身体に残っている。あの拳の感覚。

 何だあの重い拳。しかも見る限り全然本気じゃなかったのにも関わらずあの重さ。なんであんなに冴えない男からあんな拳が。

 昨日のアレですら内臓が破裂したかと思ったのに、もし本気で打たれていたら。

 く.....しかも俺のマジの拳もあんなに軽々と涼しい顔で避けやがって


 確か名前は間宮.......一体何者なんだあいつは。

 あの時に一瞬漏れ出たあいつからの殺気はまじでやばかった。

 本当に.......ヤバかった。

 

 あの時のことを思い出すと、悔しいが今でも身体が震えてしまう。

 くっ.........。



 「........。」



 それにそんな間宮よりもさらに異質なのはあいつだ。


 確か名前は.......田中。

 

 なんだあいつのあの堂々とした余裕な態度。

 間宮もそうだが、何であいつも俺に全くビビらない。


 しかも、あいつに関しては拳を繰り出そうとするこの俺を前にずっとポケットに手を突っ込んでやがったぞ。瞬きひとつせずに余裕の笑みを浮かべて。


 結果的には間宮に止められてカウンターを喰らってしまった俺だったが、あのままもし、あいつが割り込んでこなければ俺はどうなっていた........。


 全く予想ができない。

 俺だってかなりの数の場数は踏んできた。だから大体の喧嘩のパターンは読める。

 だが、まじであいつのあの後の行動はいくらシュミレーションしても読めねぇ。マジで何なんだあいつ。不気味すぎる。


 今日だってずっとあいつは俺にガンをとばしていた。

 一体何を考えているんだ。

 読めねぇ.......意味が全くわからない。異質すぎる。


 見た目は糞雑魚なのに、本当になんだあいつからにじみ出るあの不気味な雰囲気は。あんな奴、まじで今まで見たことねぇぞ。


 正直、あいつに比べたらまだ間宮の方がましだ。


 もしかして喧嘩も、あいつは間宮以上........?

 思い返せば昨日もあいつは、俺をボコった間宮の後ろでずっと楽しそうに笑っていたし。

 まじもんのやばいやつなのか?

 

 全くあの冴えない見た目からは想像できないけど、同様に冴えない間宮があの強さ。本当にやばいぞ.....クソやべえぞ田中。


 何なんだ。何なんだあの二人は。


 それに.....くっ


 あの山本という女

 めちゃくそ可愛い。えぐいほどタイプ。

 すぐにでも、すぐにでも俺の女にしてぇ。

 マジで俺のものにしたいけど........。


 チッ、糞が。糞が糞が糞がっ

 あの感じ。すでに間宮のお手付きか。

 今もまたイチャイチャしやがって。

 く......何であの冴えない男が女まで。


 おかしすぎるだろ。


 本来なら奪ってやればいいだけなんだが、俺の本能がそれだけはやめろと訴えかけてくる。絶対にやめろと。

 まぁ今回ばかりは俺もその本能に従わせてもらう。


 真剣に命が危ないかもしれないからな。 

 未知数の危険に、想像しただけで俺の額からはまた冷や汗だ。


 く......あんな上玉を前にこの俺が何もできないなんて、チッ。


 んで、またか......糞が。


 また視線を感じる。そしてその方向を向くと決まって奴がいる。


 田中.......。


 だから何でお前はさっきからずっと絶えず俺のことを睨んでいるんだよ。

 き、気持ち悪ぃよ。マジで何なんだよ。


 って、うわっ。またニヤッとしやがった。


 お、おっかねぇ。

 意味が分からなさすぎる。


 サイコパス? サイコパスなのか?


 それを山本の様な美女にされたらクソ嬉しいけど、何でよりにもよってテメェなんだ。

 全く嬉しくない。本当に嬉しくない。ふざけんな。


 あぁ.........何なんだよ。何なんだよ。こいつ。

 

 何で、何で俺は昨日こんな奴等にカツアゲをかましちまったんだ。

 そして何でよりにもよって、そのこいつ等のいるこの学校、このクラスに転校してきちまったんだ。


 クソっ、何で、何で、何でこの俺が..........。


 おかしい。おかしいぞ。おかしすぎるぞ色々と。


 くっ.......


 本当にいい加減に俺を見るのは止めてくれ.....田中。


 駄目だ。本当に頭がおかしくなる。

  

 何なんだ。何なんだよ。


 田中 


 マジで意味がわからねぇ。

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