第92話【夏休み 自覚?】


 「........。」

 

 何だこれは.......。

 本当に何だ......。


 いや、マジで......は?

 

 何でこんなに俺の画像が......。

 というか何で俺が王子なんて。

 改めて意味がわからない。


 さっきの山本から見せてもらった画像を再度確認するために、twitter検索で『ピルナンデス 海 高校生』と入れてみると今、目に映っているのは大量の俺。


 スクロールすればするほど大量の俺。


 『イケメンすぎる』

 『完璧王子』

 『顔も身体もパーフェクト 男の完成形』

 『マジで付き合いたい』

 『俳優以上に俳優』

 『ジェニーズ越え』


 「.......。」

 全て間違いなく俺の画像と共に記載のある言葉。


 もう本当に何が何だか、脳の処理速度がその現状の光景に追いついてこない。


 ところどころ海での画像以外にも山本にパンケーキを食べさせてもらっている画像が俺の目には飛び込んできたりもする。


 結構前の柊さんとの修学旅行での写真とかも.......。


 そしてそこに書いていることは俺のことをかっこいいと肯定するコメントか、言っていいのかわからないけど明らかに俺の事を嫉妬するようなコメントの二種類しかほぼない。


 まじで......どういうことだ。


 俺がかっこいい?俺に嫉妬?


 え.........

 

 く.......頭がグワングワンとしてくる。

 でも、なら何で友達ができなかった......


 おかしいだろ。

 そんなに騒がれるほどかっこいいのなら絶対に友達の一人かふたりはできるはず......

 

 それにそもそも何で一般人の俺の画像がこんなに拡散されているんだ。

 肖像権とかの問題はどうなっているんだ........


 こんなん榊とか学校の皆が見たら.......。


 く........また陰口で俺は


 そして気がついたら、手に持っていたスマホを通話画面に切り替え、ある男に電話をしていた俺。


 今はもう彼にでもすがりたい。


 本当に意味がわからなさすぎる。

 とにかく知っているかどうかはわからないけれど、誰かにこの状況のことを確認したい。


 そして悲しくも俺が今そんなことを聞けるのはおそらく彼ぐらいしかいない。


 でも本当にあまりにも意味がわからなさすぎる。


 あ、つながった。


 「はい、田中です。」

 「た、田中くん。」


 「どうしたんだよ間宮くん。君から僕に電話をかけてくるなんて初めてじゃないか?」


 「あぁ.....田中君は知ってるか。知っていたらでいいんだけどtwitterで俺が「あぁ渋谷さんとのやつ? もちろん知ってるよ。」


 「.......。」


 「とうとう間宮くんも知っちゃったんだね。自分が世間でどういう存在になっているのかを。」


 「これは.....何なんだ。」


 「いや、至って単純だよ。間宮くんがかっこよすぎるから世間が騒いでいるんだよ。今回は特に生放送で全国ネットのテレビに映っちゃったのがまずかったね。」


 「いや、俺はかっこよくなんかな「いや、かっこいいだろうが。」


 「........。」


 「確かに学校での君は冴えないよ。ただのぼっちだよ。でもただのぼっちにあんなに美女たちが普通群がると思うかい?」


 「いや、でもそ「今、そこに映っている写真あるだろ。多分だけど、眼鏡かけてなくて髪も目にかかってないんじゃないか? ってかかかってないだろ? 」


 「まぁそれは......。」


 「君がどんだけ卑屈になっているかわからないし、自分で自分のことを評価するのは確かに難しいからもしれなけど、そこに映っている男はまぎれもないイケメンなんだよ。」


 「い「いや、イケメンだよ。」


 田中君は俺に言葉を全く挟ませてくれない。


 「確か、修学旅行から帰ってきた後に間宮くんの討伐依頼が9chのスレで出てただろ。あれも間宮くんはきっとちゃんと見てないよね。今からでもちゃんと見てみなよ。間宮くんがドクマナルドにいけなくなったのは柊さんのせいなんかではなく、間宮くん自身がかっこよすぎるせいだったってわかるから。」


 「は.......?」


 「顔がかっこよく引き締まった肉体でスタイル抜群、喧嘩も強くて、少しひねくれてはいるけど何だかんだでかなり優しい。そして頭脳も天才。これ、誰のことかわかるかい?」


 「え、誰......」

 「君だろうが。間宮くん。君だよ。」


 「えっ」

 「いや、さっきから何回『え?』と『は?』を連呼すれば気がすむんだよ。君しかいないだろうが。いくら間宮くんでもちょっとムカついてきたよ。」


 「........。」

 

 「とにかく君はもう完璧なんだよ。悔しいけど男として僕が勝てるところなんて一切ない。というか君を超える男に僕はまだ生まれてきてから一度も出会っていないよ。だから観念して認めようよ。今までに起こった出来事を思い返してみれば色々と合点がいくところがあるんじゃないかな。自分がかっこよくて無敵の男だと仮定して考えた場合なら。」


 「.......。」

 

 「まぁ学校での君と今日の海にいた時の君ではあまりにも見た目が違いすぎるからまだ大丈夫だけど、もし君がそのtwitterで拡散されている真の間宮くんの姿で学校に間宮健人として登校でもしたもんなら、もう本当にすごいことになるだろうね。」


 「........。」


 「まぁ、普段の眼鏡の姿でもわかる人にはわかるんだろうけど、まぁ間違いなく榊くんとかあの辺りの君をバカにしている奴等はまだ、真の君の姿には気が付いていないと思うよ。あいつ等じたいがバカだからね。」


 「.........。」


 「まぁ色々と頭を整理するんだね。とりあえず僕もちょっと色々と忙しいからもう切るね。バイバイ。」


 「あ、ちょ........。」


 その田中君の言葉を最後に電話は唐突に切れてしまったのであった。


 でも、俺が......かっこいい。


 「........。」


 俺が.......かっこいい?


 「........。」


 俺が........かっこいい


 「.........。」


 スマホを見ても......そこには俺の画像と共にやっぱり『かっこいい』の文字の羅列


 「..........。」


 ........。

 

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