第91話【夏休み SNS】


 「ま、間宮くんが強い理由って、そういうことだったんだね。」

 「ん? 強い?」


 俺は今、色々とあって自分の部屋に山本サヤと二人きり........。

 本当に何だこの状況は.......。


 「ボクシング........」


 「......。」

 あぁ......家がボクシングジムだってことか。

 看板を見たのか。まぁ見たくなくても目に入ってくる大きさだしな......。


 「いや.....まぁ強いかどうかは知らないけど、昔は結構やってたな。」

 結構っていうか、かなり本格的に.......毎日泣くぐらいに。


 「や、やっぱりそうなんだ。今はやってないの?」


 「まぁ、やってないな。ちょっと色々とあって.......」

 ほんとに色々と考えさせられることがあって........。


 「そ、そっか.....」




 「「........。」」




 そして.......まただ。またお互いに無言の時間。

 何か気まずい......というか、かなり気まずい。


 しかし目の前にいる山本からは、この場から腰を上げる気配が全くまだ感じられない........。


 「.......。」


 本当に何なんだ......この時間。

 ど、どうしたらいい......。


 別に何かあるわけではもちろんないけど、クラスの女子が自分の部屋にいるって状況はちょっとやっぱり何か色々と.......。それも二人っきりで......。


 何でこんなことに.......。


 「あ、あの時は本当にありがとう。改めて.....ありがとう。」


 「.........。」

 って、あの時?


 気がついたら、また俺に向かってそう口を開いてくる山本。


 「あの、その.....間宮くんが私を助けにきてくれたあの時。悪い奴等から私を守ってくれたよね。」


 あぁ........。

 「いや、まぁあれは別に........。」


 「本当にかっこよかった........。」


 「..........。」


 そう言って彼女の視線はいつの間にかまた俺の目に.......。

 って、ま、またそんな頬を赤くして.......な、なんだよ急に。


 と思ったらすぐに下を向いて今度は何かモジモジと.......。


 「強いし......頭も良いし、優しいし......ほんとにずるい......。」


 「.........。」

 な、なんだよ.......その感じ。

 き、急になんでそんな.......。


 「.........。」

 「.........。」


 そして再び俺たち二人の間には沈黙の時間。


 もう漫画も渡したのに、何でまだ彼女は.......

 それにちょっと自分の家だっていうのに何か......やっぱり女の子がこんなに近くにいると。普通にこの状況はやっぱりおかしすぎる......。


 「あと今日の間宮くんもすごっくかっこよかったな......。ほんとは私が間宮くんの隣にいたかったんだけどな........。」


 「え?」

 今日.......? 隣にいたかった?

 って、また何だよ。そ、その表情は........


 それに何かさっきからとてつもなく暑い.....

 クーラーはもうガンガンに効いているはずなのに......すごく何か身体の中から暑さが.......。


 すると目の前にいる彼女はいつの間にかスマホを取り出している様。


 「ほんとに.....ずるいな。渋谷さん。でもこのままだと.....」


 って何だ........今度は急に小さい声でぶつぶつと。

 そしてその何かを迷っている様な感じも........な、何だ?


 ........ん? 


 彼女は何故かスマホの画面と俺の顔を交互に見ている......。


 そしてそうこう考えているといつの間にか、彼女は何かを決心したように頷き、手に持っているスマホの画面をゆっくりと俺に向けてくる。


 なんだ?


 ......って、え?


 「ん?」


 あれ? 


 って、.....え?ちょ、え?


 お、俺.......?


 「前の私の時もそうだったけど、すごい反響。まぁこんなにかっこよかったらそうなっちゃうよね.......。今回もかなり拡散されてるみたい。今回は特に全国ネットのテレビで流れちゃってるからね.......」


 は?......え、え? まじで何これ。

 拡散?


 「え、何だこれ。」


 かっこよすぎる........。

 王子.......。

 イケメンすぎる.......

 付き合いたい........

 眩しすぎる.......

 美男美女........。


 そういった言葉と共に俺と渋谷さんの海での画像が今俺の目にはかなりの数映り込んでいる.......。


 本当になんだこれ......。 

 twitter.......か?


 よくわからないけど、二つの矢印のできているマークとハートマークの横の数字が今もどんどんと増えていっている。


 え、何だこれ え?


 「多分、見ている限り私の時のtwitterでの騒動も知らなかったよね......間宮くん。」

 「.......え、意味がわからない。な、何だよこれは。」


 今回のことだってお昼の情報番組で数十秒流れただけじゃ......え?


 ま、まじでわからない。

 俺がかっこいい?イケメン?付き合いたい?


 は? え? 


 これが、山本とパンケーキを食べに行ったこと等をリンリンや柊さん達が知っていた理由........?


 もしかして、俺に討伐依頼が出た理由も.......。


 「で、でも、俺は全くかっこよくなんて.......」


 「いや、間宮くんはかっこいいよ。本当にかっこいい.......。」


 すると今度はそう言って真剣な表情で食い気味に俺の目をじっと見つめてくる彼女。


 「.........え?」


 も、もう.....何が何だかわからない。

 本当にどういうことだ。

 俺がかっこいい? twitter? 


 え........


 目の前の彼女は尚も真剣な表情で俺の事をみつめてくる。


「間宮くんはかっこいいよ。」


 いや、え? 


 さっきから『え?』という言葉しかまじで頭に浮かんでこない。  


 って、な、何でそんな近づいて......え

 おい、ちょ......


 「間宮くん.......あのね。」


 え.......ちょ、え



 ガタンッ



 「「え.......。」」




 って........え?


 「ま、また何をしている。遥.......。」


 聞こえてきた音がする方向にすぐに顔を向けると、そこにいたのはまた扉の向こうから何故かこちらをじっと見ている遥。


 そしてその光景に急いで俺から離れる山本。


 「ご、ごめん。やっぱり帰るね。ま、漫画ありがとう。」


 「あ、あぁ。」


 「え、もう帰っちゃうんですか? いいとこなのに」


 な、何がいいところだ.......。

 ま、またニヤニヤとお前はまじで何を......。


 そして気が付いたら俺の部屋からそそくさと出ていき、一階へと歩いて行く山本。


 な、なんなんだよほんとに。


 「.......。」


 でも.....え。


 いや、本当になんなんだよ。


 俺が.....え?

 山本も今、一体俺に何をしようと.....


 まじで意味が....... 


 え?


 ほんと何だよあれ。

 何で俺の画像があんなに......。


 そう思いながら自らのスマホを手にする俺。


「........え?」


 ど、どういうこと?


 「.........。」


 ほんとに.....え?


_____________________________________

いつも読んでくださりありがとうございます。個人的な報告ですがtwitter始めました。ちょっと楽しいです。


 

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