第82話【夏休み ドクマナルドバイト④】
「ふぅ、バイトってとてもつかれマスね。ふふっ、タイヘンです。くたくたデス。」
今、俺の目の前にはそう言いながらも頑張って優しく微笑んでいるアリス......。
「あぁ、よく頑張ったな........。今日はゆっくり休むんだぞ。」
「はい!ありがとうございマス!」
ほんとにアリスは大変だったろうからな.......。
普通はこのバイトではあんなことはしない。
まぁ......店長にはきつく言っておいたから次からはもうちょっとマシだろう。
正直、客しだいなところもあるんだけどな......。
ちょっとアリスのところに来るお客さんは何か........。
「それにしても、まみやくんもリンリンさんもずっとこんなにしんどいしごとをすごいデス!」
いや.......だからアリス、これが普通ではないんだ。
あれは異常だ.......。
「.........。」
そしてなんでリンリンはさっきからずっと放心状態なんだ......。
「おい、リンリンどうした。」
「いや.......自信をなくしたネ。色々と......。」
「よくわからないけど........お疲れさま。」
本当によくわからないけど、あまり今は触れない方がよさそうだ.......。
っていうか.......何か今日はスマホが何回か震えてたっけな。
誰からだったのだろうか.......
そう思いながら俺は、ゆっくりとスマホをポケットの中から取り出す......。
って......『さおり』?
え、何で?
え?確かに連絡先には何か入ってたけど......え?
柊さんがなんで俺に?
用なんてないだろ........え?
『ケンちゃん。何で何も言わずにいなくなっちゃうのよ!』
『不在着信』
『けんちゃん。見たらすぐに連絡ちょうだい。』
「.........。」
俺、何かしたのか......え?
て、うわっ.......ちょうどまた電話が来た。
え....あ、え?ビデオ通話?
「あ、やっと繋がった。もうケンちゃん。私今怒ってるよ!」
うおっ.....押しちゃった。
「あ.........」
普通に本物だ........。
まじか........何で。
え?
「何で何も言わずにいなくなっちゃうのよ。寂しすぎるよ!」
「え?」
あまりにもいきなりすぎる電話に俺はまだ状況を理解できていない状態。
寂しい?
「ねぇ。また戻ってくるんだよね。このままお別れなんかじゃないよね。」
「え.........。」
「戻ってくるんだよね!」
「ま、まぁ、機会があれば。」
「もう......機会って何よ。ケンちゃんは私のこと嫌いなの?」
え.......嫌い?いきなりどういう質問だ。
え? アイドルが俺にビデオ通話。
まじでどういう状況だこれ?
「いや、嫌いではないけど......。」
まじで何だこれは.....。
「じゃあ戻ってきてよ。」
「え.........。」
何でそうなる........。
それに正直、いざ時間がたってから考えると、もうあっちにはちょっとって感じもある。かなりの重労働だからな......。
っていうかまじで柊さんは何で俺をあのバイトにそんなに戻したい。
そんなに人手が足りないのか........。
でも一応って.......もしかして、今度こそ俺にドッキリを仕掛けるつもりか?
「..........。」
「ねぇ。ケンちゃん。ところで今何してるの?」
.........何だ。何故そんなことが気になる。
「バ、バイトが終わったところです。」
「あー、ドクマナルドだっけ。ってケンちゃん敬語!駄目でしょ!」
「あ、はい。じゃなくて.....うん。」
「ふふ、じゃあ私も今度オフの時に行っちゃおっかな。」
「.........。」
一体彼女は何を考えている。
まじで今度こそドッキリか?
何を仕掛けてくるつもりなんだ........。
「ん? ケント。誰と話してるね?」
ん?
そう言っていつの間にかリンリンが俺の隣に........。
「え、え? な、なんで、さおりんがいる。さおりんがいるネ。え、どういうことネ? ケント......。え? さ、さおりんとline? え?」
「え、ケンちゃん。だ、誰かなその子。」
「え? バイトの同僚だけど.........。」
「し、しかもタメ口ネ......。」
「ん? なにしてるんですか? マミヤくん。」
するといつの間にかアリスも俺のスマホを隣から覗き込んでいる。
な、なんか二人に挟まれて窮屈.......。
何か顔も近いし.......。
「え、が、外国人? け、けんちゃん。そ、そっちの子は誰かな?」
「え? こっちもバイトの同僚だけど.......。」
「え、ド、ドクマナルドだよね........。」
「うん。そうだけど.......。」
「レ、レベル高すぎない......。」
レベル? 何を言っているんだ柊さんは.......。
「し、しかもパンケーキの子と違う........。」
ん?何て言ったのだろうか。急に声が小さくなりすぎて聞こえなかった。
「うわーテレビのヒトだ。すごいデスまみやくん。ともだちですか?」
「いや......違う。」
アリス。少し恥ずかしいことを言っているから黙ろうか........。
かろうじて知り合いぐらいだ。
いや、彼女からしたら普通に赤の他人と言っても過言ではない。
知り合いはちょっとうぬぼれすぎたかも.......。
「え、ケンちゃん。ひどい。」
何がだよ......。
「って、さ、さっきからいる、そこの女の子も、もしかして外国の方?日本人っぽいけど何かイントネーションが......。」
「あぁ、この子は中国から来たリンリン。」
「リ、リンリンちゃん.....。へ、へぇー。」
「ケ、ケント、さ、さおりんが私の名前を呼んだね。え、一体何が起こってるネ。え?」
あぁ.......そうだな。
その興奮する気持ち。痛いほどわかるぞ。
「わ、わたしはアリスです!ドイツからきました。」
「ア、アリスちゃん......ド、ドイツ。」
アリスもよくわかってないとはいえ、芸能人には緊張するよな......。
当然だ。
「とりあえずこんな感じで今はバイトに復帰したから、ちょっと戻るのは難しいかもしれない。申し訳ないけど。」
普通に田中くんは行くだろうし......あいつに二人分働いてもらおう。
「あ、え、それは、え? ちょ、ちょっとまた連絡するね。」
また?
え? トップアイドルだよな。
素人の俺にまた?
やっぱりこれはドッキリを仕掛けてくるつもりか?
そうとしか改めて思えない。
素人の彼女たちがいきなり出てきたから計画が崩れそうになって焦ったか.......。
何かいきなり挙動不審な感じだし......。
怪しすぎる。
でも、何でそんなにこれまた素人の俺にドッキリをかけようと固執する.......。
おかしいだろ.......。
「と、ところで、もういないよね? ケンちゃん。」
もういない? 何がだよ.......。
「へ?」
さっきから色々とほんとによくわからない。
「と、とりあえず。一旦切るね。じゃあ。」
あ.......終わった。
で、まじで何だったんだ。
トップアイドルが俺のスマホにいきなり.......。
改めて非日常すぎるだろ........何だこれ。
「ふふ、やっぱりマミヤくんはすごいデス。テレビのヒトとともだちです。」
いや......そんなわけないだろアリス。
アリスのいうとおり、あれは俺とは違う世界にいるテレビのヒトだ。
多分、今後会うことはない。
多分。
て、え........?
「ケント........後でたっぷりさっきの状況について説明してもらうネ。」
さ、さっきまで興奮して喜んでたくせになんで......なんで急にそんな怖い顔に。
おかしいだろ........まじで何で。
ていうか全体的に何だこの状況。
まじで意味わからない.......。
って、また?
って、え........?
こ、今度はミキから着信?
しかもまたビデオ通話......。
な、何なんだよ。一体。
俺のスマホはずっと右手で震えている.......。
「........。」
「って、え? ケ、ケント、も、もしかして、このミキって......。」
「.........。」
あぁ、多分リンリンが今、頭の中で考えているミキだ。
「ケ、ケントは一体何者ネ..........。」
ぼっちだけど....。
「ん? でなくていいんですか? まみやくん。」
あぁ、アリス。これはあくまで勘だが、出ない方がいい........。
何でかはわからないけど、俺の直感がそう言っている。
どっちにしろ後で怒られるけど........何故か今はでるなと身体に鳥肌が立っているのだ。
「.........。」
それにしても長いな。
着信が止まらない........。
「........。」
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