第27話【再会】


 「え......ここって。」

 「フフ、どうしたヨ。ケント」

 

 「え......」

 俺は確実に今、目の前にある中華料理店を知っている......。

 この特徴的な看板、忘れるわけがない。

 かなり昔に俺は何度かここを訪れている......。 

 ある少女と二人で.....。 


 「え......嘘だろ。もしかして......え?リ、リンリン?」

 「フフ、やっと思いだしてくれたカ?ケント。」

 「え、ほ、ほんとにリンリンなのか?」

 「ウン......。リンリン。私の名前は蘭リンリンだヨ」


 ま、まじか、言われてみれば面影はなくはないが.....色々と成長していて気がつけなかった。

 本当にあのリンリンなのか.......。

 でも、今ならわかる。

 目の前にいる少女は間違いなく俺が昔にここを一緒に訪れた......。あのリンリンだ。リ、リンリン。


 「ケント、あの頃のことは覚えているカ?」


 あぁ覚えている。

 あの頃は確か小学校2年生ぐらいのことだっただろうか。

 当時、幼くもボクシング漬けの毎日に嫌気がさしていた俺は頻繁に練習をさぼってとある公園に飛び出していた。

 そこで出会ったのがリンリンだった......。

 当時の彼女は日本に来たばかりで確か、全然日本語が話せなかった。

 よく彼女が寂しそうに一人で公園で遊んでいるのを見かけた俺が声をかけたのが始まりだったはずだ。


 彼女は両親の仕事が忙しかったみたいでほんとによくこの公園に一人でいた。

 だからよく練習を飛び出していた俺も必然的に彼女と関わる機会が多くなっていったのだ。

 色々と二人で遊んだ記憶も覚えているが、その中でもこの中華料理店は、俺がお年玉貯金からだした500円を握りしめて何度か彼女と訪れた場所だと記憶している。

 う、うん。絶対にここだ。間違いない。

 ここは量も多いから一皿を二人で分け合っていたことも覚えている。

 彼女が好きなチャーハンをよく。

 値段も確かかなり安かった。500円で足りたんだから。


 「あの頃のよくケントと一緒に食べたチャーハン、まだ私覚えているね。」

 日本語もほんとにうまくなったな。


 「ほんとにあの頃はケントがいなければ、もう私ダメになってたネ。両親は仕事で忙しいし、日本語も全然しゃべれないカラ友達もできない。そんなときにケントが私に声をかけてくれたネ。ほんとに嬉しかったヨ。」


 「あぁ、俺も全部覚えているよ。全部......」

  出会って2カ月くらいで彼女はまた親の都合で引っ越してしまったんだけどな。

 また戻ってきてたんだな


 って、え......


 「もう、ならもっと早く気づくネ。私はケントのことすぐに気づいたんだカラ。それにずっと、ずっと.......覚えていたネ。」

 色々と思い出していた俺の耳には彼女の言葉が超至近距離から聞こえてくる。


 ま、まじか......。


 そう........。俺はいつの間にか彼女に抱きしめられていた。


 「やっと再会できたネ。ケント。」

 満面の笑みでそう言ってくるリンリンが俺の顔の前にいる。


 「ほんとに嬉しい。ほんとに......。ケントも私のこと覚えていてくれたネ。もし、今日ここでも思い出してくれなけれバ、私ホントに泣くしかなかったネ。」

 「そ、そりゃ覚えているさ。」


 そして今度は上目遣いで俺にそう言ってくる彼女。


 「フフ、ホント嬉しい。お祝いネ。ケント、チャーハンたベルカ?」

 「あ、あぁ。食べようか。」


 そう言って俺と彼女は何年ぶりかの本当の再会を果たし、目の前の中華料理店へと足を進めるのであった 

 

 それにしてもまさか抱き着かれるとは......。

 昔も割とスキンシップが激しかった記憶もあるが、さらに進化しているな....。

 やっぱり中国の人はスキンシップが激しいのだろうか。


 _____そして本当に久しぶりに食べたこの店のチャーハンは、さらに俺に彼女との昔の思い出を思い出させてくれるのであった。

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