第7話 【模試の成績】
今日の俺は珍しくいつもより胸が高鳴っていた。
なぜなら今日は全国模試の成績が発表される日。
模試の成績は自分の今の立ち位置を知ることができる一番の指標。そしてその良し悪しは俺のこれからの未来を大きく左右する。
日々、勉学には力をいれてきたつもりだ。
俺は堂々と自分の名前が呼ばれるのを自席で待つ。
俺の視界には周りのクラスメイト達が次々と壇上の先生から名前を呼ばれて結果を受けとっていく光景。
「間宮!」
よし。
ようやくあの光景の中にまじれると、先生の声に素早く反応して自席を離れる俺。
席にもどるまで我慢ができない。
俺は歩きながら、すぐに受けとった成績表の中身を確認する。
はぁ.......まじか。
順位がいつもより下がってしまっている。
あんなに勉強したのに、どういうことだ......
俺は静かに自席へと戻り、机の上に頭を沈める。
「榊やっべー。頭よすぎだろー」
「秀才すぎる、なんだよこの順位。天才かよ」
すると落ち込んでいる俺の耳には騒音が聞こえ始める。
「ちなみに、この学年のトップは今回もこのクラスにいる。先生は誇りに思うぞ。」
先生からは騒音をさらに大きくする言葉。
「35000人中230位って絶対トップは榊できまりじゃん」
「えっやば、志望校とかS判定じゃん」
「喧嘩も強くて、頭もいいって無敵じゃねーか」
声や音だけでも榊の机の周りには人がわらわらと集まっていることがわかる。
「榊くんすごーい」
特に周りの女子たちが騒がしく興奮しているようだ。
しかし、ほとんどのクラスメイトが榊の周りに集まってる中、何故か俺のことを凝視してくる女が俺の前には座っている。
まずそこはお前の席ではないだろ.......。
気づかないフリをして、頭を沈めようとするが、俺の耳には悪魔の囁き。
「間宮くんの成績はどうだった。みせてよ。」
誰が見せるか......。
最近なにかとよく絡んでくるこの女は山本サヤ。
俺とは住む世界が違うリア充界に住む女だ。
そんな彼女が陰の世界のトップである俺に頻繁に喋りかけてくるようになったことには違和感を感じて萎縮してしまう......
向こうが俺にしゃべってくるメリットがない分、何か壺とかを買わせてくるつもりなんじゃないかとしか正直考えられない。
色んな意味でこわい。
俺がひねくれすぎているのだろうか。
でもこわいものはこわい。
「嫌です」
小さな声で返事をすると、あろうことか山本サヤは自分の結果を俺に無理矢理見せつけてきた。
「私の結果を見たんだから間宮くんも見せてよ。じゃないと間宮くんに無理矢理結果を見られたって私、大きな声で泣いちゃうよ」
目の前には満面の笑みで俺に意味のわからない脅しをかけてくる山本
泣きたいのはこっちだ......。
何だよ。そのあざとい微笑みは.....。
俺はしかたなく模試の結果を山本にわたす。
「私と間宮くん、どっちの方が頭いいかなぁ。榊くんには遠く及ばないけど、私もそれなりに頭は良いんだよね。間宮くんのがっかりした顔をみる限り今回はあんまりっぽいね~。ドンマイ、ドンマイ。」
楽しそうに、受けとった俺の成績表をまじまじと見つめている山本
くっ......もうちょっとプライバシーってもんを考えてほしい。
____しかし数秒後、そこにいる彼女は間抜けな面をして固まっていた。
今、山本サヤの目にうつる間宮健人の模試の結果票には順位「11/35000」の数字。
「ナンデガッカリシテルノ? ッテカナニコレ?」
何故かカタコトで俺に質問をしてくる山本。
「いや二桁に落ちたんで」
素っ気ないかもしれないが、一言だけ俺は山本に言葉を返す。
「サヤぁ~。そんなぼっちくんにかまってないでこっちに来てこの素晴らしき成績をみよ-。」
いつのまにか調子にのった榊の大きな声、いわゆる騒音がまた俺の耳には聞こえてくる。
「はぁ......」
って、何故か俺より先に、目の前の俺にも聞こえるか聞こえないぐらいのため息を吐く山本......。
本当になぜ?
「みたーい!」
そして彼女はそう言いながら上目遣いで俺を見つめたかと思うと、そのまま榊たちの方へ立ち去っていった。
ん?
「すっごーい。やっぱり榊くんは天才だね!まじ尊敬。」
榊は、山本にこれでもかというほど持ち上げられて鼻の下を伸ばしに伸ばしきっている。
一方で俺は、山本が前の席から離れる時に小さな声でささやいた言葉
「やっぱり、間宮くんって......。おもしろいね.....。すっごくおもしろい」
この発言に......順位が下がったって言ってんのに何がおもしろいんだよと眉間にシワをよせるのであった。
ちなみに、俺こと間宮健人が全国模試二桁の順位にも納得せず努力して叶えようとしている夢、それは多くの人々を救うことのできる立派な医者になることである。
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