第6話 【小悪魔ビッチ 】

 私の名前は山本サヤ


 自分でいうのも何だけど、私は異性からよくモテる。


 顔は客観的に見ても可愛い部類には入ると思うし、身体も友達達からはわがままボディで羨ましいと誉められることが多い。


 隣のクラスの美女である渋谷アリサさんとどっちの方が可愛いかなどと勝手に比較されることも多いが、嫌な気持ちは全くしない。


 私から見ても美しいと思える彼女と比べられるということはそれだけ私に女としての魅力があるっていうことだから。


 現に、この高校に入ってからも、既に何度ももう異性から告白された。


 男の子達から告白されることはやっぱりすごく嬉しい。

 優越感がすごいから。


 大きな声では言えないけれど......特にステータスの高い、クラスや学年で人気者の男の子たちに告白されることが私の価値をあげてくれるみたいで優越感を増大させてくれる。


 昔から私が甘ったるい声で、女の子らしい仕草をしていれば男は自然と私のことを好きになる。


 同じクラスの榊や高砂ももうすぐ私に告白してくるだろう。


 今までの経験からすると時間の問題だ。



しかし、意外かもしれないがこんなに異性からモテモテの私は、実は男性とお付き合いというものをしたことがない。


 あざとい私を嫌う女たちからはビッチと揶揄される私だが普通に処女である。


 何故なら、私は異性に私を好きになってもらいたいだけで告白してくる男の子を好きになったことはない。


 正直、優越感の為に数々の男たちを手玉にとって遊んできた私には人を好きになるという感覚が欠如してしまっていたのかもしれない。


 あの出来事、そしてあの男の子に遭遇するまでは......


_____ ある日の帰り道、別のクラスの親友といつものようにお喋りしながら歩いていると大きな声が聞こえてきた。


 「金だせよコラァ」


 その声と共に駅の方で一人の男の子が厳ついヤンキー達にからまれて泣いてる光景が目に入ってくる。


 絡まれている彼は胸ぐらを捕まれて号泣している.......。


 おそらくあのヤンキーたちは今日ホームルームで先生が言っていた、他の地域で傷害事件を犯している奴らだろう。


 まだ捕まっていないって言う話だったし特徴も一致する。


今.......私の目に映っているうちの生徒たちは、その光景に見向きもせず粛々と駅の改札口を抜けていく。


 絶対に気づいてはいるが関わりたくないのだろう。


 気持ちはわかるし、私だって正直なにもできない......。


 現に、

「そんな奴がでてきたら、まじでボコボコにしてやるよ」

などと、騒いでいた同じクラスの榊や守谷もその光景に見てみぬふりを決め込み、静かに改札を通りすぎでいった。


 そしてあっという間に見えなくなる。



 私も何もできないから、彼らに何かをいう資格はないのだけれど正直、あんなに大口をたたいていたわりには情けない。


 今も目に映る、うちの制服の生徒は見た感じ一年生だろう。

 その瞳からは、さっきよりも更に大量の涙が目から零れ落ちている。


 私はせめてもと思い。その光景から距離をとり友達と共に警察に電話をする。


 すぐに向かいますと返答があったので、私は何もできないがその光景を遠目に見守った。


 すると、話したことはないが知ってる顔の奴もいつのまにかヤンキー達に囲まれている。


 名前は、宮田?間中?


 名前は思い出せないが、確か、彼は同じクラスのぼっちの男の子だ


 正直パッとしない弱そうな2人がヤンキーに囲まれている状況は目もあてられない。


 早く警察がきてくれるように祈っているとヤンキーのうちの一人が、唐突にぼっちくんの顔面に向けてに拳をくりだした。


 危ないと思った瞬間


 え?


 そこにはその拳をいとも容易く避けて相手の顎に強烈な右ストレートをあびせるぼっちくんがいた.......。


 相手はガクっと体を震わせて地面に倒れる。


 そしてそこからの顛末ははやかった......。


 逆上したヤンキー達が次々にぼっちくんに襲いかかるが、もののみごとにぼっちくんの拳にヤンキーたちは倒れていく。


 そ、それも全て一撃で.......。


 気付けばぼっちくんの前にはヤンキー達が全員倒れている光景......。


 その驚愕の光景に驚いているとようやくサイレンをならしたパトカーがやってくる。


 しかし、一瞬目を離したすきに、ぼっちくんはすでに、その場にはいなくなっていた.......。


 ____この出来事がきっかけで山本サヤはぼっちくんこと間宮健人くんをはじめてクラスの男性として認識することになった。


そして山本サヤはここから間宮健人に夢中になっていくことになる。

他の男性が目に入らなくなるほどに。

今まで自分があじわっていた優越感なんて本当にくだらないものだと思えるほどに。

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