また、あの日の君を

ねぎ

プロローグ

肌寒さが際立ってきて、そろそろ師匠が走り出す頃かなーなんて暇を持て余した脳みそが考えていた日だった。

普段もだが、その日はそれに輪をかけて普通な日だった。怖いくらい何もなさすぎる日だった。

店はいつもより少しお客さんが少ないくらいで、静かで、平和で。

本当に何も無かった。

厄介なお客さんが来るわけでもなく

おつりを間違えて渡すわけでもなく

何もない、本当にいつも通りを通り過ぎた日だった。暖房の効いた店内、そんな退屈な日中、客足は途絶え、向かいのカフェが繁盛しているのを見て、昼飯時だと気づく。

窓から射し込む陽射しがこの季節では心地好くて、真っ白のカウンターに突っ伏すと、ひんやりとしていたそれは、四角いから差し込む陽射しにあたためられていて、仕事中だというのに、まあ、いいか。そう思えてきて、だんだんと俺は微睡みの中に落ちていく。

店が繁盛するのもいいことだけれど、店が暇というのもなかなか悪くない。

だけど、やはり日常と非日常は同じ割合でやってくるのだろう、その日はたったひとつ、たったひとつだけ大きな非日常がやってきた。

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