20. あらためて、ニオと

 しばらくすると、本殿裏にみちるさんが来た。


「祭祀が終わったから、ちょっと拝殿に来なさい」


 わたしとのどかは掃除道具を壁際に置き、みちるさんの後を追った。


「今来てるのは、氏子総代の娘さんなの。せっかくだからあいさつしておきなさい」


 ん? 娘さん?


 それって、もしかして。


 みちるさんの後に続いて拝殿へ入る。拝殿の中央にいるのは、白衣はくえを着た女の子で……。


「やっぱりニオだったんだ!」


 正座しているニオに駆けよる。


「あら。あんたたち、いつの間に再会してたの?」


「さっき本殿の裏で!」


「あら、そうだったの。せっかく感動の再会を用意したのに」


 と、みちるさんが苦笑いを浮かべる。


「二人はいつまでこっちにいるの?」


「これからずっとだよ。四月からはこっちの学校に通うの」


「ニオちゃんと同じところよ。町立淡海小学校ね」


 みちるさんが言うと、ニオは「やったー」とうれしそうに手をあげた。


「そういえばニオ、今日は祭祀のために来てたんだね」


「うん。毎週来てるんだよ」


「何だ。わたし、てっきりのどかに会いに来たのかとかんちがいしちゃった」


「しししししーちゃん!? 別にわたしのんちゃんが来てるって正夢なんて見てなくてこれからは毎日でもみずうみをいっしょにかけがえのないこの日々を生きていきたいよ!?」


 す、とわたしの頭に手が置かれた。


「ぎゃあああああ!」


「拝殿ではさわがない。オーケー?」


「何でわたしだけがはい、わかりました! もうさわぎません!」


 またひとつ大事なことを学んでしまった。

 口ごたえはさらなる握力を呼ぶ。

 もう一生忘れない。


「さ、感動の再会もすんだし、ニオちゃん、そろそろ行きましょう」


 と、みちるさんにうながされ、わたしたちは拝殿を出た。


 拝殿の階段下には、お手伝いにきてくれているおばあさんが立っていた。


「もしかしてニオのお祖母ちゃん?」


 隣のニオは「うん」とうなずいた。

 聞くと、ニオの一家は昔からの氏子さんらしい。


「小さな神仕えさま。これからまたニオちゃんと遊んであげてね」


 お辞儀をするおばあさんに、わたしとのどかも礼を返す。


「「はい、もちろん」」


 ニオは、無駄に力の入った笑顔で「今度、うちにも遊びに来てね!」と言い残して帰っていった。


 白衣のままで。


 しばらくするとあわてて戻ってきて、今度こそ洋服に着替えてニオは帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る