第三章 うみの町の幼なじみ

16. 度のないメガネ

「はい、しずか」


 お昼ごはんを食べ終えた後のことだ。みちるさんはわたしにメガネを差しだした。


「度は入ってないけど、これで見えるから」


「え、それで?」


 半信半疑だけど、とりあえずかけてみる。


「ほんとだ! 何で? 度は入ってないんでしょ?」


神目かむめは半分神世かむよにずれてるって言ったでしょう。しずかの場合は左目ね。現世うつしよのものを通して見れば、ちゃんと現世にピントが合うの」


「なるほど。垣間見かいまみの術の逆なのか」


 と、のどかは勝手になっとくしている。


 えっと……さっき教わった垣間見の術では、神目の前に、神手かむてでつくった輪をおいて神気かむきを見た。

 あれは、現世と神世を半分ずつ見ている神目を、より神世の側に近づける術だ。


 そっか。逆に現世のものであるメガネをとおすと、神目を現世の側に近づけることになるんだ。


「それわたしのだから大きいでしょう。ちゃんとしずかに合ったのを買わないとね。夕方義兄さんが来るから、街に買いに行きましょう」


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