第二章 神社の一日は早起きから

7. 新しい朝

 翌朝は五時に起きた。


 昨日までは六時起きだったから、いつもよりちょっと早い。


 それでも気分は爽快!

 カーテンを開ければ琵琶湖の景色が広がっているし、窓を開ければみずうみの風がさあっと吹き込んでくる。


 わたしとのどかは、二階の空き部屋にふとんをしいて寝た。

 この部屋も懐かしい。昔はよくお母さんとここに泊まったものだ。


 部屋にあった鏡でおさげをつくり、一階に下りる。


 家と社務所はひと続きになっている。というか、ひとつの大きな家の中を住居部分と社務所に分けている感じ。

 宮司を代々務める息長の一族は、昔から境内の中に住んできたらしい。

 みちるさんは昨日までひとりでここに住んでいたし、今日からはわたしとのどかがそこに加わるわけだ。


「おはよう!」


 社務所の控え室に入ると、そこには白い和服に水色の袴を身にまとったみちるさんがいた。


「ああ、しずか。おはよう。一人で起きられたのね」


「……おあ、よ」


みちるさんの前には半分眠ったままののどかが立っていて、みちるさんと同じ和服を着させられている。


「あ、和服だ。いいなー」


「次はしずかの番よ。今日はわたしがやるけど、次からは自分で着られるようにね」


 その和服は、神職が日常的に身にまとう装束らしい。


 みちるさんに着せてもらいながら、いろいろと説明を聞く。

 白い和服は白衣はくえという名前で、袴の水色は浅葱色あさぎいろと呼ぶそうだ。

 新撰組の装束の色と同じらしい。『新撰組』と聞いたときだけ、のどかは一瞬だけ目を覚まして背筋を伸ばした。

 のどかは歴史とか伝承だとかが好きで、いつもそんな本ばかり読んでいる。


「わたし、てっきり巫女さんの服を着るのかと思ってた。あの赤い袴、かわいいのに」


「巫女と神職はちがうの。神職は神社を運営したり、祭祀を取りしきったりする人で、巫女はその補助をするのよ」


「へえ。立場がちがうのね」


「そうよ。でも神社のためにお勤めをするのは同じ。神仕えにとってもお勤めはとても大事なものなのよ。日々お勤めにはげむことで、人との縁や土地との縁を強めていくの。ほら、しっかりやっといで」


 と、みちるさんはわたしとのどかの背中をばしんとたたいた。

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