2. お父さんがきて
「……ん」
自分の声が聞こえて、意識がもどる。
目を開ける。
見えたのは、白い天井、クリーム色のカーテン、オレンジにそまった空。
何となく見覚えのある景色。
……ああ、そうか。保健室だ。
ケガした子や体調をくずした子を連れて来るのはしょっちゅうだけど、保健室で横になるの初めてだ。
「おはよう」
聞き慣れた声がする。
のどかだ。本から顔をあげて、わたしを見ている。
「わたし、寝てた?」
「というか、気を失ってた」
起きあがり、辺りを見回す。保健室にいるのはのどかだけで、先生の姿はどこにもなかった。
「無茶しすぎたよ。つむじ風に飛び込むなんて」
「そうだ! みんなはだいじょうぶだった?」
「うん。ひざをすりむいた人はいたけどね。気絶までしたのはしずかだけ」
う。それはちょっと恥ずかしいかも。
……まあいいよ。とにかく、他にケガ人が出なくてよかった。
ほっと安心したそのすきをつくように、いきなりドアが開かれた。
「しずか、だいじょうぶかい?」
「お父さん!?」
入ってきたお父さんがベッドの脇に立つ。
「目が覚めたのか。心配したよ、しずか」
お父さんが、ほっと大きく息を吐いた。
「わたしは全然平気だよ。それよりお父さん、お仕事はいいの?」
「もちろんだよ」
「というか、のどか! 何でこれしきのことで連絡したの?」
お父さんは、少し離れた高校で歴史の先生をしている。
この時間はまだ仕事のはずだ。それなのにわざわざ小学校に呼び出すなんて。
「何かあったらすぐ連絡するって約束だからね」
「ただ気絶しただけじゃない」
お父さんがわたしの頭に優しく手を置いた。
「気絶は『だけ』ですませられる話じゃないよ。で、しずか、どうしたんだい? 頭を打ったわけじゃないだろう? 目まいがしたとか?」
「……うーんとね」
わたしは、さっきグラウンドで起きたことを説明した。
つむじ風のこと。ひものこと。引っぱったら解けて、かすみがわいたこと。
話を聞いているうちに、お父さんの表情がじょじょに真剣なものになっていった。
「……しずか。見たのは、ひもで間違いないんだね?」
「うん。白くて、ほんの少しだけ紫っぽかったかな」
「そうか。……ちょっとごめんよ」
と、お父さんはケータイを取りだし、窓際で電話を始めた。
「もしもし、浩次です。おひさしぶりですね。実はね、今日しずかが急に倒れてね……」
お父さんは小さな声でぼそぼそと説明して、後半は「うん、うん、そうだね」と相手の話を聞きながら何度もうなずいた。
のどかと顔を見合わせる。
いきなり、どうしたんだろう?
そして、電話を終えたお父さんは、わたしのランドセルを手に取った。
「しずか、車まで歩けるかい?」
「うん。多分だいじょうぶ」
ベッドからおりて立つ。
うん。ふらふらしたりはしない。
「じゃあ行こう」
そう言って、お父さんは急ぎ足で保健室を出ていった。
のどかと二人、慌てて後を追う。
廊下ですれちがった保健の先生にも、お父さんは「息長しずかの父です。急いでいるので、これで失礼します」とだけ言い残してどんどん早足で進んでいく。
振り返ると、先生はぽかんと口を開けていた。
「乗ったね。じゃあ、行こう」
「お父さん、行くってどこに?」
「
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