第51話 それでも

 指先が触れた夢…それは掴めぬということなのだろうか?

 引き寄せることなどできずに…なぞるだけだった夢

「頑張ったよね…」

「ホントに?」


 あのとき…もっと手を伸ばせたんじゃない?

 そんなことないよ

 掴めなかったんだよ…

 ホントに?


 指先は敏感だ…だから残酷なんだ。

 何よりも繊細で…誰よりも残酷だ。


 何も感じなければ…後悔もなかったのに…

 冷たいままで、感覚も凍り付いたまま、このまま…何も感じなければよかったのに…

 なんで、夢に触れた感触だけ、いつまでも残るの?

 いつまでも…いつまでも…指先に残る、あのときのぬくもりは…僕の指先にとどまり続ける。


 だから残酷なんだ。

 どれほどの感覚を閉ざせば楽になれる?

 切り落とせば…捨てられる?

 それでも…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る