雨と僕。

海月ななり

『雨と僕』

雨が降った。


黒い雲が空を覆った。


風が怒っていた。


暗い暗い一日だった。


どうして雨は降るのだろう。


雨なんて、いなくなってしまえば良いのに。


そんなことを思っていた。




雨が止んだ。


太陽が雲の間から顔を出した。


風が歌っていた。


ああ、やっぱり青空は美しい。


雨なんて、いなくなってしまえば良いのに。


そんなことを思っていた。




ふと外を見た。


陽光にきらめく雫が揺れていた。


葉の先から落ちる雫に、雨宿りから出てきた小さな虫がびくんとはねた。


少しだけ、可愛いと思った。


ああ、僕は知らなかったんだ。


雨上がりがこんなにも美しいなんて。


雨さん、素敵なものを見せてくれてありがとう。


そんなことを思いながら、空に架かる虹を見つめた。

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