第6話 服買いに行くのか·····めんどくさいなあ
お兄ちゃんは鈍感なのですっ!
お兄ちゃんの家から二分ちょっとの家までの帰り道。日和は、お兄ちゃんへの怒りを心の中で放ちます。
「なんで、気付いてくれないのですか……」
日和は毎日、好きだって、大好きだって言っているのに、お兄ちゃんは「俺もだよ」とか言ってヘラヘラ笑っているだけ。
「もう……」
家に着いて、ベットに入っても、日和の頭の中はお兄ちゃんでいっぱいです。
家ではない場所にデートに行くことでお兄ちゃんの日和を見る目も変わるのですかね。
とにかく、デートの日は、とびきりおしゃれをして、お兄ちゃんに日和のことを一人の女性として見てもらうのですっ!
そのためには、手段なんて選ばないのです……。残りの人生をお兄ちゃんといっしょに過ごすためなら。
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「外に行くんだから、そんな服で行くわけにもいかないよっ。きー君」
どんな服で当日行くのか知りたいと篠塚に聞かれたので、一着しか持っていない俺的にはオシャレな服の写真を送った結果がこれである。
「そんなこと言っても……何で男の俺が服なんて買いに来ないといけないんだよっ!」
「遊園地にデートに行くというのに、貴一坊ちゃんが、だらしない格好をしていて恥ずかしいのは日和様でございますよ?」
「はあ……。まあ、ここまで来たんだから、行くけどさ……」
デートの日まで二日となった木曜日。午前授業が終わって二時間ほど。俺は、篠塚と佐藤さんと共にイオ○モールに来ている。
「じゃあ、行くよ? きー君」
「佐藤は車で待っております。こういう事はお嬢様の方が詳しいでしょう」
「その通りね」
「え……」
こいつと二人で行くのかよ。佐藤さんもいると思って来たのに。
「付いてきて。きー君」
「はいはい」
イ○ンモールには来たことは無く、自分の服を自分で買った事すら無い俺は、篠塚について行かざるを得ない。イオン○ールには、美味しい食べ物はもちろん、映画館まで入っているとか。なんて所だ。
「こことかが良いと思うんだけど」
篠塚に案内された店は、いかにもオシャレな男どもが来そうな雰囲気がした。店名はアルファベットが崩されすぎてて読めない。店に入ろうとする俺と篠塚を見て、金髪のギャルっぽい女性店員が話しかけてきた。こういうのがめんどくさいんだよな。オシャレな店って……。
「デート? こんなに可愛い子に服を選んでもらえるとか、あなた、幸せね」
「ああ……はい」
ここで、「彼氏じゃないですけど」とか言っても篠塚が怒るだけだろう。何となく篠塚の扱い方が分かってきたような気がする。
「ほら、きー君。どんな服が欲しいか言わなきゃ」
篠塚は上機嫌でそう言った。俺の選択肢は合っていたようだ。日和に借りたときメモ4しといて良かった。
「えーと。今度、外に遊びに行くのでその時の為の服を探しに来たんですけど」
「はいはい。遠出でデートの行くのね。で、夜遅くまで可愛い彼女を連れ回してネカフェで行為に及ぶわけだ」
「及ぶかっ!」
この店員からは篠塚と同じ匂いがするぜ。
「……ちっ。ヘタレが」
「客に対してその言い方はないだろ。あと、篠塚っ! なんでお前まで舌打ち被せてるんだ」
店員と完全にシンクロして舌打ちをした篠塚である。
「冗談はこの位にしといてっと。君は背が高くて格好いいからお姉さん張り切っちゃうよお」
「りょうびちゃんも、張り切っちゃうよお」
「お前は張り切らんでいい」
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金髪店員は態度こそ、悪かったが、服を選ぶセンスは高いようで、良い感じの服を選んでくれた。隣で張り切っていた方は試着室に侵入してくるだけだったけど。
その隣で張り切っていた方、椋薇ちゃんは今、俺の目の前でソフトクリームを食べている。
「美味しいっ」
「あの、篠塚さん? そろそろ行きませんか? お前いつまでソフトクリーム食ってんの?」
「ゆっくり食べた方が美味しいんだもん」
「佐藤さんをずっと車で待たすわけにも行かないだろ」
篠塚は俺が服を選び終わった後、俺を色んな店に連れ回した。このアイス屋を含めて、六店目になるか。
「きー君にも、1口あげるよっ」
「なんで食べかけの時に言うんだよ! 初めに言ってくれよ」
「人が多いからって恥ずかしがらなくて良いから。ほらアーン」
「食わないぞ」
こんな場所でそんなカレカノみたいな事ができるかっ! 一部のイオン〇ールに乗り込んでいる勇気ある非リアに殺されるわっ。
「またまたあ。ほらほら、おいちいでちゅよ~」
篠塚が俺の目の前でアイスを動かす。
テーブルを挟んで篠塚は乗り出す形になっていて、その·····。ゆとりのあるデザインのワンピースのせいで胸もとが、かなり見えている。ピンク色のブラだ。日和のやつは俺が洗濯しているから見たことはあるが、日和以外の人のブラを見ることなんてもちろん初めてだ。特大マシュマロの如き二つの球体を篠塚のブラはまるで隠しえていないのだから、破壊力は抜群。男ならこの状態では誰もが全視神経を総動員して、この半球体を愛でるだろう。
無論、俺も例外ではない!
「きー君っ。食べないのなら私が食べさせてあげるっ!」
半球体に見入っていたせいで篠塚が俺の口に強引に押し当ててくるアイスに反応することが出来なかった。
ソフトクリームは篠塚の狙い通り、俺の口に直撃した。が、勢い余って口に入り切らなかったソフトクリーム達が俺の顔に広がって付き、その一部は俺のズボンのチャック付近に落ちた·····かに見える。
ソフトクリームが大量に目に入って前が見えない!!! ぐ、ぐあああああ! 痛いっ! ソフトクリームって目に入ったらこんなに痛いのかっ!
「き、きー君っ! ごめんなさい。私·····」
「いい。謝らなくていい。謝らなくていいから、どっか顔を洗える場所まで連れて行ってくれ! 目に入って前が見えない!!」
謝られても、目に入ったソフトクリームは消える訳でもない。
「分かったよ。きー君っ! 私が腕を持って誘導するっ!」
篠塚が俺の腕を持って、椅子から立ち上がらせてくれた。
「私が引っ張る方へ進んで行ってね」
「分かった」
篠塚が引っ張る方に素直について行く。篠塚が持っているのは俺の左腕なんだけど、その二の腕あたりに柔らかいものが押し当てられているような気がするのは気のせいかな? うん。きっと気のせいだ。気のせいだと思っておこう。
「ガラッ」
扉が開かれる音がした。篠塚が開けたみたいだ。俺は篠塚が扉を開けた空間の中に引っ張られていく。
「ここに洗面台があるのか?」
「うん。ここだよ」
「どこだ?」
「ここだってば」
篠塚が俺の右手を手に取って持ち上げた。何かが俺の手に触れる。柔らかくて、少し湿っている物体。その物体に俺は触り覚えがあった。前に触れたのは手ではなかった·····。その物体は、篠塚の唇だった。
篠塚が火照って湿った声で言う。
「私の唇と舌で、きー君に付いた白いもの全部舐めとってあげるっ!」
俺の貞操が危ういです。
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