第12話 「やってきました異世界日本」…えんじょい☆ざ『異世界日本』

 ※この話は本編とは別視点の話で、舞台は日本になります。

 しかし、だんだん本編のキャラが絡んだり、この視点の話に出てくるキャラが本編に出たりと徐々に絡み合っていきます。


 *****



「あれ、ココどこ?」


 気がつくとソコは、見知らぬ広場だった。

 街中ではあるのだろうけど。夜だというのに建物や道に明かりがきらびやかにともってる。


 いや、煌びやかというか……明る過ぎません!?


 通る人数も王都のようにごった返しているし、見たこともない衣装をみんな着てるし、何処かの国に魔法で飛ばされたのかな。

 確か私は、冒険者ギルドから故郷の森に帰る途中で、昼食のパンを歩きながら囓っていて…


「@&%☆0π♪〆!?」


「#¥£◎£!」


 私の存在に気づいた人が、何か叫びながら取り囲み始めた。

 どこかから取り出した小さな金属板らしき物を、みんな手に持っている。


 パシャ! パシャ! パシャ!


 金属板から激しい光の明滅が起こる。

 魔法の攻撃!? あれ、でも身体にダメージ無さそう? いやそんなことより、こちらも魔法で反撃!


“精霊さん、私に力を貸して。目の前の人達を追い払って!”


 しーん。


 あれ? あれれ!? 何にも起こらないよ!?

 あ、もしかしてさっきの光って魔法封じのヤツだったの!?

 ヤバイヤバイヤバイ。


 と、そのとき一人の男の人が私に近寄って何か話しかけてきた。


「001000110!?」


 はい?


「◯£◯△*⬛️✖️?」


 何ですか?


「もしかして、俺と同じ世界の者か!?」


 やった、やっと話が通じる人が来た!


「同じ世界……って?」


「よし、この言葉なら通じるな。とりあえず話は後だ。俺について来い」


「え? イヤです」


「はぁ!?」


 どこの世界に、見知らぬ男にホイホイ着いていくバカな女が居ますか。いややわぁ。



*****



 ガタンゴトン、ガタンゴトン


 しぃ〜〜〜〜ん


……気まずい。


 いま私はさっきの男の人と、大きくて細長い金属の箱がたくさん繋がったモノの中に一緒にいてます。


 あれから私は、この男の人に強引に手を引かれてあの場から連れ去られた。

 車輪が付いた金属の大きな箱……乗り合い馬車? に押し込まれてしばらくどこかに移動した後、降ろされた先の奇妙な服が沢山置かれている店に放り込まれた。

 男の人が店の人に何かを話すと、その店の女の人が何着か服を手に取りこちらへやって来た。

 え? え? え? と目をグルグルさせながらオロオロしてると、男の人が溜め息をついて声をかけてくれる。


「いいから大人しく立ってろ」


……はい。


 やがて店の女の人が何点か私に服をあてて見繕みつくろい、その後男の人に服を見せた。

 男の人は落ち着いた色のズボンと上着を選んで、お金らしき物を渡していた。


「そこのカーテンの向こうの箱の中で、この服に着替えるんだ」


 はいはい、要はこの街で目立たない服に着替えるってことね。

 さすがに私は黙って指示に従った。


 ガタンゴトン、ガタンゴトン


 それから男の人に連れられて、この乗り物に一緒に乗っている。

 そこでいくつかこの男の人に教わった。



 いわく、ここは元の世界とは全く違う世界である事。


 曰く、この世界では魔素がとても薄く精霊も基本的に居ないので、マトモに魔法が使えない事。

 ああ、それでさっきは魔法のまの字も発動しなかったのか。


 曰く、この国の名前はニッポンであるという事。


 曰く、この男の人もエルフだという事。

 あ本当だ、耳長い。何で気付かなかったんだろ。


 曰く、この世界には私達の世界だけではなく、様々な世界から色んなエルフが流れて来ている事。


 等々。



 でも、教えてくれた事の信憑性は兎も角、この男の人自身は、なんか嫌ぁ〜な感じなのよねー。言葉では説明しにくいけど。

 出会った時に腰に下げてた剣なんか、チラッと見えたけど、真っ黒でなんか唸り声みたいなのが聞こえた気がするし。

 めっちゃ不気味。いややわぁ。



*****



 あれから二回乗り物を乗り換えて、降り立った先は、どことなく私の世界での東方の国の雰囲気が微かに感じられる場所だった。


「昔はともかく最近のキョウトはガイコク人が多いから、耳以外は目立たないとは思うが、念のために用心しろ」


 いや、用心のことよりもその知らない言葉をホイホイ使うの止めてーな。

 なんなん? そのキョウトとかガイコクとかって。いややわぁ。


「というか元々着ていたその服……。持って行くのは別に構わんが、普段は着る機会はないぞ?

この世界でそんな格好したら、ただの痴女だ」


 マジですか!?

 でもよく分からないけど、男の人の話を信じるなら、この服が数少ない故郷との繋がりになるんでしょ?

 ちょっと考えたら、そんな私の気持ちぐらい分かりそうなのに、それを邪魔っ気に言うなんて最悪。いややわぁ。



*****



 やがてやって来た、男の人の仲間らしい人が乗り込んでいた、車輪付きの小さな箱に、私達二人も乗り込む。

 その箱がしばらく走った後、降りた私達は男の人の案内の元、下町の雑然とした街中を、あっちにぐるぐる、こっちにぐるぐるして辿り着いた建物があった。


 その建物の地下に向かう階段を降りていき、その先にある、見たこともない文字が書かれたドアを開ける。

 そこは、予想していたよりも大きな空間が広がっていた。

 内装も派手じゃないけどお金掛かってそうな、地味に豪華な雰囲気の材質。

 好みの問題もあるけど、基本この部屋の内装趣味いいわー。


 そこかしこに色んな男女の、私と同じエルフさんが居て、色んな人が私と違う言葉で話しています。

 同族の筈なのに同族じゃない。


 何これ訳わかんないー!

 同じエルフなのに意思疎通出来ないなんてあり得な〜い。


 人間ガスグニ戦争スルノ判ル気ガスルー。


 と、私を連れてきた男の人が、私に手の平を向けて腕を突き出してきた。


 待て…ね。


……あれ? さっきまで分からなかった筈の皆の会話が分かる!?


 いや、小声で話している内容までは分からないけど。

 けど、小声で訳わからない呟きしてるのと、理解出来る言葉で呟いているのは全く違うからね?


「よし、魔法が作用したな。こっちだ」


……あー何かこの部屋に入ったら自動で翻訳する魔法がかかるのか。便利!

 ん? さっきはこの世界じゃ魔法は使えないって言ってたような……。


 男の人は正面奥に座っている女の人に大声で声をかける。


「ママ! 連れてきたぞ!」


 うわぁ〜凄いこの女の人。何て言うか、肝っ玉母さんって感じ?


 赤いドレスに身を包んだ、デップリ太った女のエルフさんです。

 豪華な椅子にふんぞり返って座ってます。

 椅子の後ろには……何だろ、大きな円筒状のガラスの水槽? に何かオレンジっぽい光る水みたいなのが入ってますねー。


「よく来たね。あたしはここでビッグママって呼ばれてるモンさ。安直だけど分かり易くて良いだろう?」


「あ、はい。よろしくお願いします……?」


「まだこの世界に来たばっかで訳が分からないだろうから、戸惑ってるね。まぁ仕方ない」


「はあ……」


「心配ないさ。此処はアンタみたいにこの世界に迷い込んだエルフ同士、いやエルフに限らず、異世界から来た連中同士お互いに助け合おうってぇ自助組織だ。……元々はね」


 あれ? 何か最後に小声で、ちょっと不安になる言葉が聞こえた気がするんですが……。

 ビッグママさんが強引に話題を変えるように話を続ける。まぁ今は仕方がない。様子を見るしかないな〜。


「さて、あとは……ここに居てる他の面々は、追い追い聞いていけば良いだろう。

と言うわけで、まずはアンタの名前を教えて貰おうか」


「わかりました!」


 私、自分の名前けっこう気に入っているのよね。素敵な響きだし。


「クラムチャウダー・シラタマゼンザイ・アーリオオーリオです!」


「アンタ、この世界じゃ本名を名乗らない方が良いね」


「何でっ!?」

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