谷口ちゃんは電波な娘 B面

クラウドストーリー代理

第1話 電波ではあるが人間です。

春先に滝廉太郎の花でも流れそうな暖かさの日に、少女は一人河川敷回っていた。


「……」n周目、目が合う

「………」

「…………」n+1周目また目が合う

「……………」


それを僕と彼女は数分間繰り返し、そして彼女は僕と視線を合わせるようにピタリと止まった。


「なにしてるん?」

「アンドロメダ星雲のスカラベは、黒い太陽に食い荒らされたと、牧草を作っていた少年が語りかけてきた」


????

地球から2,537,000光年離れてる銀河にフンコロガシがいんの?


「アンドロメダにフンコロガシがいるかは定かではないけれど、僕はそれを否定はしないよ、いるかも知れないからね」

「えぇ、それにスカラベという名称の生物がアンドロメダ星雲の中に居るかもしれないわ、それにアンドロメダ星雲には牧場があるかも知れない、少年がいたから」


そう考えると世界というか地球外生命体というモノに僕たちと似た生物がいるのかもしれない、この少女が何を言っているのかは分からないけれど、否定するのは精神衛生上よろしくない。


「では青年、貴方の名前を教えてくれるか?初対面の割には意外と話せた方だと思う」


多分それは側から見て、こらっ見ちゃいけません!と言われそうな事してるからだと思う。


「僕の名前は田中 優矢、憂鬱の憂に人偏を付けた優と、弓矢の矢」


テンプレな自己紹介だ。だよな?


「ふむ、優矢君か、私は谷口 優香だ、優は君と同じ憂鬱の憂に人偏を付けた優と、香水の香だ、よろしく」


僕と彼女は淡々と自己紹介をするが、会ってからというか、僕が彼女を眺め始めてから30分程度が過ぎている。

何をしていたんだろう僕は。


「さて、さっきのスカラベの続きだが」

あ、まだ続くんですね。うす。


「まぁ、ここで話すのはなんだ、場所を移そうか」


そう言い彼女について行く数分後、駅からそこそこ近い喫茶店に着いた。

鳥や草木の彫刻に彩られた扉の上に、扉の幅三つほどの長い看板があった。


「喫茶なんて読むのコレ」

「さぁ?」


さぁ?てなんだよそれ

「私はここ16年生きてきたけれどこの字だけは読めなかった」

「そっかぁ」

無機質にしか返せない私はどうしたもんかと悩むのも、例の文字を見て何も考えられなくなってしまったからなのだ。


僕と彼女は名も知らぬカフェに入店した。

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