おっさんハンターのモンスター剥ぎ取り講座

タハノア

プロローグ

第1話 教本の作成依頼

 誤字や日本語がおかしいところが多々あるので、気になる方はすぐにブラウザバックしてください。


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 ここは、王都に近いウリキドの街。


 この街は大きな特徴がある。街のど真ん中にダンジョンがあるのだ。


 その名も[全種の洞窟]その名の通り全種類の魔物がいるのではないか、というほど発生する魔物の種類が豊富なダンジョンである。


 そんなダンジョンを日々探索しているのが、ダンジョンハンターだ。


 そんなダンジョンハンターをまとめるのがハンターギルド。


 そのギルドでは最近問題が発生している。


 それは、ハンターからの素材の買取だ。


 素材のとり方が雑で、良くて傷物、悪いと買取拒否になってしまっている。命がけで手に入れた素材が買取拒否されれば、もちろん揉め事が起こる。


 そこで、ギルドはある対抗策を取ることにしたのだった。


 問題解決の立役者として白羽の矢が立った男が仕事をしていた。


 畑に出たイノシシの処理を頼まれたのだ。


 処理と言っても討伐ではなく解体だ。イノシシは、すでに農家の怒りに触れて斧で頭をかち割られていた。


 男はイノシシの足を縛り近場にあった太い木の枝から吊るす。そして、袋からナイフを取り出し首に切込みを入れた。


 すると首から血が溢れでる。これは、血抜きという肉の臭みを取る大事な作業だ。


 イノシシは木の根元に掘られた穴に血の池を作る。


 その頃には近くにある牧場から血の匂いを嗅ぎつけた牧羊犬が集まってきて、ソワソワとしている。


 ある程度血が抜けたところで、男がイノシシの腹をナイフで縦に切り開く。とび出てきたイノシシの内臓を手早くナイフで切り離すと集まってきた牧羊犬に投げ与える。


 イヌ科の動物は、内容物がある腸や胃袋は避けるが、その他の臓器は好物と言っても良い。


 犬が食べない部分は血の池に放り込む。後で埋めて木の養分にするためだ。


 内臓の抜き取りが終わると、男は皮を剥いでいく。ももから足先へナイフを入れ、足の先をぐるりと一周すると体の重さで皮がずれる。そのずれたところに縦にナイフを入れ、皮と肉を切り離していく。


 その処理をもう片方の足にもして、下半身の皮をはぎ終わると、上半身は力任せに引き剥がす。頭に穴はあるものの頭部までついた見事な一枚毛皮が取れた。


 皮剥が終わったイノシシは、首を落とされると、肉屋で見かける姿に変わった。


 男は、内臓と頭を埋めると解体が終わったことを依頼主に知らせる。そして、報酬代わりの酒を二本もらって、呼び出されていたギルドへと向かった。

 



「俺に教本を作れだって? 面白い冗談だ。で本当は何の用事なんだ?」


 ギルドのカウンターに呼び出され、困惑しているのは、ベテランハンターのリアーロだ。


 見た目は中肉中背で髪は短髪で赤茶色。何処にでもいる普通のおっさんだ。


 変わったところといえば、ダンジョンに出かける前なのにすでにカバンが一つ満杯なことぐらいだろう。


 リアーロは、これと言って目立った活躍はないが、素材の扱いに長けていて右に出る者はいない。彼が持ち込む素材は、製造業者の間で奪い合いになるほど下処理が完璧なのだ。


 なにより、この[全種の洞窟]の魔物素材をほぼ把握している歩く教本のような男なのだ。


 ギルドは、そのリアーロ歩く教本に依頼し本物の教本を作ろうとしているのだ。


「冗談ではないです。あなたも知っているでしょ? 若いハンターの素材採取の酷さを」


 リアーロにそう答えたのは、眼鏡を掛けた女性だ。名は、サブリナこのギルドの買取業務を行っている職員だ。


「このとおりです。買取拒否を伝える度に言い合いになるのは、うんざりなんです!」


 サブリナは、大きな胸を強調するようにカウンターに乗せると、胸の横に手ついて頭を下げた。体重をかけられた女の対男用凶器おっぱいがぐにゃりと形を変える。


「普通に無理だな。本なんか、書けるわけ無いだろ」


 目線を凶器へ落としながらも、リアーロはそっけなく答える。


 しかし、教本が作れないとは言っていないのでサブリナは食い下がる。


「本をまとめる人材はこちらが用意します! その人に実践を交えた講座をしてもらうだけで良いのです」


 そう頼まれてリアーロは、少し考える。


 彼は、素材に関しては自分の右に出る者はいないと自負している。そして、おっさん特有の教育欲の高まりもでてきた。


 酔って若者を捕まえて説教をするおっさんになってはいけない! と、必死に教育欲を押さえてきた。ギルドからの依頼はリアーロにとってそれほど悪い話ではない。


「人をよこしてくれるなら、問題ないか……。失敗したときの違約金とかはあるのか?」


 契約前に、きちんと確認しておかないといけないことがある。依頼料はもちろん違約金である。出来ない依頼をふっかけて、違約金をいただくなんて詐欺もあるから注意しなくてはならない。


「一切ないです! どんな理由で何が起ころうと違約金をいただくことはありません!」


 それなら良いかと、リアーロとりあえずやってみるかと軽い気持ちで受けるのだった。



「はじめまして! ポラと申します! あなたの講座を受けて本にします!」


 ギルドの前で元気に挨拶をしてきたのは、俺の講座を本にまとめる役を引き受けた女の子・・・だった。


 透き通った青い髪は、肩丈ほどで、大きくクリクリとした茶色の丸い目は好奇心に満ち溢れている。手には背丈より大きな杖を持っている。その見た目から魔道士であることがわかる。


 しかし、リアーロはそれを見て驚いた。


「君ひとりか?」


 リアーロは、実戦形式の講座をしてくれと言われていたので、もちろんダンジョン内で魔物を討伐しその場で処理をするのだと思っていたからである。


 普通は、パーティの基準である5人、リアーロ自身を入れたとしても、最低4人と会うことになると思いこんでいた。


「はい! よろしくお願いします!」


 元気に挨拶する女の子、おっさんが早く結婚していたら娘でもおかしくないような年齢の子だ。


「ダンジョンに潜るんだぞ!?」


 リアーロがあきれた調子で、ポラに言った。


「はい! 任せてください!」


 彼女はそう言いながら、懐を探りあるものを取り出しリアーロに突きつけた。


「なに!? 金竜討伐勲章だと!?」


 ポラがリアーロに掲げたのは、金色の竜をかたどった紋章がついた勲章だった。


 金竜討伐勲章……。それは、最強の魔物である竜種、その中でも最強である金竜を討伐したという証だ。


「よく見てください。単独・・金竜討伐勲章ですよ」


 更に驚くことに、勲章の下部にある数字は1であった。その数字が意味するのは、討伐に参加した人数である。


 すなわち、この女の子は、単独で最強の魔物を退治した実績があるのだ。


「マジか……。」


「マジです」


 しばらく沈黙が続いたが、リアーロは、目の前の現実を受け入れることにした。


「えっと、よろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いしますね……先生!」


 ポラは、ニコニコしながら親しげに話してくる。その可愛らしさか想像もつかない実力を秘めた大魔道士ポラ。


リアーロとポラの二人三脚の教本作りは、スムーズに始まったのであった!


「うん……。ポラさん、先生はやめようか?」


「いえ、やめません。それに私のことは呼び捨てでお願いします」


「「……」」


 ……否スムーズな滑り出しとは行かなかったようである。


 

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