英雄の紋章少年伝

テン

第1話

みんなから憎むべきものみたいに俺は見られているが今日はいつもより仕打ちがひどかった。

「痛った」

「出てけよ、お前の髪を見ると敵を思い出すんだよ!」

30代くらいの商人だと思われる男性が石を俺の顔目掛けて投げつけてきて額に当たった。

普段なら暴言だけのはずが、暴力を振られ心が傷ついた。

「ちくしょう、何で俺ばっかり」

だらだら流れ出てくる真赤な自分の髪と同じ色の血を左手で拭いながら約束の公園まで俺は走り出した。

「なんで領主様はこんな憎き敵の血が流れている子を生かしているのかしら?」

今度は通りかかった若い女性が走っている俺を睨みつけながら俺にはわからないようなことを言ってきた。赤髪と血がどうのこうのって俺にはわからなかった。

毎日街の人から理不尽な仕打ちを受けているけど俺の心は折れることはなかった。

だってどんなに嫌われていても俺のことを優しく接してくれる人たちがいるから。

「どうしたんですかその血は!?」

五分ほど走って約束の公園にたどり着くと先についていたグレンが俺の怪我を心配して

ポケットからハンカチを出し「動かないでください」と近づいてきて傷がある場所に当ててきた。

「こんな傷どうってことないし、それより遊ぼうぜ!」

「そんなわけにはいきません、私のお父上のいる場所まで行き治療しましょう」

「なんでだよ、俺は平気だって言ってるだろ」

「今すぐにでも額の傷をふさがなければ一生残りますよ、さあ早く!」

グレンは自分の後ろに控えさせてたコーン色の馬にまたがり後ろに乗れと視線を飛ばしてきた。

グレンは心配性だからな、本当は領主のおじちゃんに迷惑をかけたくないから何もなかったように無理に痛いのを我慢して振舞っているけどやっぱりだめだったな。

グレンの相棒の馬に乗り領主のおちゃんがいる城まではしりだした。

俺らはまだ10歳ぐらいなのにグレンは馬をも乗りこなしているところ見ると、こいつはほんとに同じ歳なのかと思ってしまう、貴族っていうのはみんなそうなのか、こんなんじゃ到底英雄になれないなどと考えているとグレンに声をかけられた。

「やはり傷が深いようですね、それなら痛いなら痛いと早く言えばいいでしょうに、黙ってないでなんか口にしてくださいよ」

「なんで俺が本当は痛がっているなどとわかるんだ」

「あなたと何年幼馴染をしていると思っているのです、いつもならベラベラとこちらに話してくるでしょう」

確かにグレンとは二歳からの付き合いではあるが無駄に頭がいいからか幼馴染だから理解できるという範囲を超えてしっまている、そうでなかったら今頃少しは俺にもこいつのことを理解できているはずだ。

「グレンはいつから馬に乗れるようになったんだ?」

「それはですね、我が領土は多彩な馬が生息していまして私たちの一族は代々馬に乗る職業の方が多いのでそれが理由で父上に教育されました」

「貴族はグレンみたいに馬に乗れるのか?」

「他の貴族は大体学園で習うでしょうからこの歳で乗れる私は有能ということでしょう」

貴族がこんな優秀だったらどうしようとグレンに聞いたら逆に自慢話の相手にされてしまった。

やはり、グレンは他の人よりも性能がいいのだろう、羨ましい限りだ。

「そういえばさ、昔はこんな片苦し喋り方だったか?」

「いえ、お仕えする殿方が決まりましたので私なりに話し方を変えてみたのですがおかしいですかね?」

ある時から仕草や話し方が貴族の礼儀を知らない俺からしても上品なものに変わった。

まったく俺よりも荒々しかったグレンはどこに行ってしっまったというのか、だが性格までは変わってはいないのであまり違和感をかんじなかったけど。

「おかしくねーよ」

「そうですか、それなら良かったです、もうすぐ着きますよ」

「到着!」

グレンと話していると案外早く着いた。

グレンは俺が内心痛がっていることを察して自分から話し相手になってくれたことが何故か照れくさくなる、だってこんな俺のことを思ってくれる友達は世界中どこを探してもこいつ一人でしかいないからさ、だから大切にしたい。

「まだ門の前なんですがね、開門せよ」

馬に乗りながら門に向けて右手をかざすと手の甲に刻まれている紋章が光りだし「ガガガ」と開き始める。

壁が四方に城を囲んでおり門を開けなければ入れない仕組みになっていてパルド家の紋章がなければ開かない仕組みでまさに難関不落である、そのことからここが落とされればほぼ王国が負けるまで言われているらしい。

マジでかっこいいよな、やっぱり英雄になるんだったらここだよな。

「何ニヤニヤしているのですか、いきますよ」

壁の内側に入ると畑やお花畑が広がっておりとても庶民からした貴族の庭の印象とはかけ離れたものがあるだろうが俺は個性があっていいと思う。

いつ見ても野菜の種類が豊富だよな、この野菜たちを領主のおっちゃんからもらって生活していた俺にとっては感謝しかない。

「今日は帰ってくるのが早いではないかって、リオルト君その血はどうしたのだ!」

奥の畑からただの農家と同じ格好をした領主のおっちゃんがひょっこりと出てきて門の前にいるグレンに声をかけてる途中に俺の怪我に気づき地面に埋まっている野菜を踏まないように猛スピード走ってきた。

「傷口を少し触れるから我慢してくれ」

領主のおっちゃんは息を切らしながら俺の俺の前に立ち素早く怪我をしている額を触ってきた。

領主のおっちゃんが「ヒール」と呪文を唱えるとあっという間に痛みが引いた。

「やっぱり、領主のおっちゃんはすごいな、結構傷が深かったのにすぐになおしちまうなんてよ」

「なーに、こんな傷私にかかればちょちょいのチョイってもんですよ」

「それより、何故こんな怪我をしたのかを解決する必要があるでしょう」

領主のおっちゃんは俺に褒められ照れながらにやにやしだしたがグレンの発言できりっと真面目な表情になり、ため息をこぼした。

「すまないが、今から大切な話をグレンと急遽しなくちゃいけなくなってな、お詫びに明日好きな野菜を存分にあげるから今日のところは早く帰ってくれ」

俺が怪我をしたことで何か話し合うのだろう、またグレンや領主のおっちゃんに迷惑かけてしまったなと思いながらかえることにした。

幸いパルド家の騎士が送ってくれたので仕打ちを受けることはなかった。



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