第4話 緑埜航平「ヒーローは何かと忙しい、らしい」
「えー、いいなー」
絶対、連れて行かへん。
「じゃあ、俺らも別で行かねえか?」
赤羽さんが胡桃沢に言うた。
「
「言ったな」
「行きたいけど、これから予定があるから、『いいなー』って言ったんですよ」
「予定って何」
「そ、そりゃ、大学のレポートとか」
明らかに、なんか誤魔化してる言い方や。
怪しいな。
「ふーん、インターンしながら、大変だな」
「じゃあ赤羽さん、俺たちと一緒にどうですか?」
青砥さんが赤羽さんを誘った。
まあ、赤羽さんやったらええやろ。ちょっと
「行くわけねえだろ! 忙しいのに!」
どないやねん!
「彼ら5人は、国防省・特殊警備隊の【特警戦隊ボウエイジャー】。
悪の組織【
しかし、【特警戦隊ボウエイジャー】は国家機密組織。
彼らの正体は、例え家族であっても明かすことは許されない。
戦え! 【特警戦隊ボウエイジャー】!
日本の平和は、君たちの手にかかっている!」
「あのさー、それ、やめてもらえねえか?」
我慢できへんかったんやろう。
赤羽さんが、奥の部屋からマイクを持って出て来た男に言うた。
もちろん、僕ら4人もうなずいた。
「え? なんで?」
「さっきのヤツ、おれらのバックで流れてるナレーションみたいなイメージなんだよな?」
「うん」
「正直、聞こえねえフリするの、面倒くせえんだよな」
確かにその通りや。まあ、趣味なんはわかるけど。
この人が喋り出したら、自分らの声量を落とさなあかんし、場合によってはストップモーションを強要してくるときもある。
「いや、でも、まだ読者の皆様に、オレの紹介してないし……あ
赤羽さんの方に歩いて行くときに、どうやら、机の
部屋の中やのに、サングラスなんかかけてるから、そんなことになるんや。
ナレーション男は背筋を伸ばして、マイクを構えた。
足をぶつけた事故なんか無かったみたいな空気を、必死で作ろうとしてるけど、無理がある。
けど本人は、仕切り直しに成功したかのように、マイクパフォーマンスを再開した。
「読者の皆様、お待たせしました! 私が……」
「お先です。【特警戦隊ボウエイジャー】司令官の
胡桃沢は、
キャップの顔は引きつって、体は微動だにせえへん。
全身が不完全燃焼を表現してる。
赤羽さんと青砥さんは、いちいちキャップのことなんか相手してられへんとばかりに部屋から出て行くから、僕もついて行くしかない。
けど、部屋を出た後、気になったから、ドアの隙間から中を覗いた。
キャップはカレーを食べてるきのこさんに顔を近づけて、マイクで言うた。
「司令官の白鳥です」
きのこさんはキャップの言葉を意に介さず、黙々とカレーを食べ続けてた。
ご飯粒がキャップの顔に飛んだ。
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