ことば

 庭でチサと遊ぶ。

 もちろん、サッカーボールで。


「やたっ!」

「うわ……やられた」


 身長差を活かした股抜きを決められて、久しぶりの負けが確定。チサはぴょんぴょんと跳びはねて可愛らしく喜んでいる。


「くそ……。今度は俺がチンチンにされてるな」


 呟いた言葉に、心乃美このみが反応した。


「お兄ちゃん、チサちゃんもいるんだよ? いつまでも小学生じゃないんだよ? もううんこおしっこちんちんでは笑えないんだよ?」


 この妹は専門用語が全く通じないんだから、ほとほと困る。


「だから違うっつうの。なあ、チサ?」


 お互いに長年サッカーをプレーしているんだから、これぐらい通じないと会話が成立しないだろう――――と、チサに同意を求めた。……しかし。


「ふぇっ!? え? えと……っ」

「………………あれ?」


 ヤバい。なにこの反応。まさか……通じてなかったのか!?


「えっと……チサ。…………チンチンぐらい……わかるよな?」

「ふえ、え、あの、えと………………わ、わかりますけれど…………」


 全力全開で顔を紅潮させている。


「はい、お兄ちゃんセクハラ確定。あうとーっ」

「マジか!? ずっと通じてなかったのか!?」


 こんなもん、通じてなかったら単なるセクハラ、下ネタ、言っている俺はド変態だ。


「サッカーやってたら通じると思ってたんだよぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 自宅の庭で弁解を叫んで、それから俺はチンチンについてわかりやすく丁寧に説明した。年下の女の子に向かって、本当に酷い話だと思う。

 ……女子チームの中で、何人ぐらいが通じていなかったのかなあ……。

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