2. 告白

「やよひ先輩、アイス食べていきません?」


 かばんを手にとった猫間くんが声をかけてくる。


「いいわよ。いきましょう」


 猫間くんは「やった」と笑顔を浮かべた。


 猫間くんは秋でも冬でも毎日欠かさずアイスを食べる。らしい。猫間くんが入部してからまだ半年。彼の冬をわたしはまだ知らない。


 部室に施錠し、廊下を並んで歩く。


「あの、猫間くん!」


 不意に声をかけられた。


 廊下の向こうに女子が立っている。


 上靴の色からして一年生。華やかな子だ。目が大きく、高いところで括られた髪にはピンクのシュシュが巻かれている。


 その子は猫間くんの隣に立つわたしをにらみつけ、「あの」と低い声を出した。


「あ、えっと、ね、猫間くん。わたし、さ、先帰るから。じゃあ!」


 猫間くんの返事も聞かず、わたしは逃げ出した。


 いやだってあの子すごいにらむし。


 しかし、ただではすまさない。


 階段の陰にかくれ、耳をそばだてる。


 二人の会話は、ぼそぼそとしか聞こえない。


 しかし一際強く発せられた一言だけは、聞き逃しようがなかった。


「ひとめ惚れでした!」

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