この作品を読了したのは、実は数か月前のことなのですが、「これは凄すぎる!安易な軽い気持ちでレビューなんか書けないぞ」と尻込みしていました。しかし誰も書かないみたいなので、もう、思い切って書かせて頂きます。
ロックという音楽と、作品のストーリーと、その文体が、これほどマッチした小説を、私は他に読んだことがありません。というか、これがロックだ!そんな思いです。リズミカルな文章と展開、作品の底流を流れるビート感を伴う熱い思い、そして読者の想像を超えて大きく、派手に飛躍していくストーリー、暴力的、という言葉すら浮かぶほどの衝撃を感じました。
キャラクターの素晴らしさも、この作品の魅力のひとつです。みんな個性的で、大変魅力があり、面白く、マネージャーのカナエも含むバンドのメンバー、誰を推すか、と聞かれれば、全員、と答えます。ウコク、蓮花、馬頭、みんなカッコいいです。馬頭が被災直後に、それでもドラムを叩くというイカレタ(※注記:自分なりの誉め言葉です、最高の、という意味です、すみません)場面がありますが、思わず泣きそうになったし、表現者として自分もこうありたい、と強く思いました。メインボーカルの紫華については、14歳という年齢もそうですが、在り様そのものが非常にエキセントリックで、でもとてもキュートで、すみません、可愛かったです。
ラストは圧巻でした。静けさと、どよめき、怒号と、そして祈り。ステージの上で彼女がひざを折った時、会場を埋め尽くすオーディエンスと共に、何が起こったか分からないで混乱する自分がいましたが、事態がハッキリ呑み込めた時、不条理な悲しみとともに、「これは小説なんかじゃない、これは伝説だ」と悟りました。だって、あまりに静かで、不条理で、正しくて、美しい、、、。
あのシーンには、うまく言えない、すべてが含まれている、そう感じました。
ロックといえば、最近は人間椅子が気に入っていてよく聴いていますが、ロックが「読みたく」なった時、またこの小説を読んでしまうんだろうなあ、と考えています。