シーズ・ザ・ロックンロール・バンド

作者 @naka-motoo

12

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★★★ Excellent!!!

世界一のロックンロールバンドをつくる。
その夢を抱いた音楽プロデューサーカナエは自らの経験を基に、一人一人最高のメンバーを集める。結成されたのは「A-KIREI」。もちろん世界一のロックンロールバンドなのだから、そんじゃそこらの活動とは違って……?

本作、とても見どころの多い物語です。
まずヒロインの造形がよい。かわいい! 紫華という女の子が主人公なのですが、14歳とは思えないくらいのパワー、そしていろっぽさ! 男女ともに、その内包する魅力で惹きつける(もちろん読者のあなたも惹きつけられる!)すばらしいヒロインです。健康的な色気がなんともいえません。
そして「世界一のロックンロールバンド」に選ばれたメンバーがものすごく濃いのです。本人たちのキャラクター自体も達観した感じで好きなのですが、その背景にある境遇がとにかく凄惨。愛する人を失い、友人を失い、身体の一部分を失い、そして心を傷つけられた仲間たち。全員の凄惨なエピソードには思わず唾を呑みます。だけど同時に、そんな彼ら彼女らがいったいなにをやってくれるのか!? というドキドキも止まりません。
さらにその凄惨なエピソードに対して、多角的な分析を講じているのがとてもいい。わたし、タイトル「FOUR・VACATION」の「死人を悼む男」というエピソードがすごく好きなんです。ただ単に悪を捌くだけじゃない。このエピソードに込められた深い愛とこの世の哀しさに涙が出てきました。多角的なんです。その上で筆者は、断じるところはきっちりと断じている。だから本音。だから心地よいのかもしれません。

そして本作の見どころの締めとしては、やはり「熱さ」を挙げたいと思います。作中にエレファントカシマシというバンドの話が出てくるのですが、まさにこのバンドのように熱く熱く燃えて燃えて燃えまくっているのです。本作は筆者の作風そのままに書かれているのですが… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

この作品を読了したのは、実は数か月前のことなのですが、「これは凄すぎる!安易な軽い気持ちでレビューなんか書けないぞ」と尻込みしていました。しかし誰も書かないみたいなので、もう、思い切って書かせて頂きます。

ロックという音楽と、作品のストーリーと、その文体が、これほどマッチした小説を、私は他に読んだことがありません。というか、これがロックだ!そんな思いです。リズミカルな文章と展開、作品の底流を流れるビート感を伴う熱い思い、そして読者の想像を超えて大きく、派手に飛躍していくストーリー、暴力的、という言葉すら浮かぶほどの衝撃を感じました。

キャラクターの素晴らしさも、この作品の魅力のひとつです。みんな個性的で、大変魅力があり、面白く、マネージャーのカナエも含むバンドのメンバー、誰を推すか、と聞かれれば、全員、と答えます。ウコク、蓮花、馬頭、みんなカッコいいです。馬頭が被災直後に、それでもドラムを叩くというイカレタ(※注記:自分なりの誉め言葉です、最高の、という意味です、すみません)場面がありますが、思わず泣きそうになったし、表現者として自分もこうありたい、と強く思いました。メインボーカルの紫華については、14歳という年齢もそうですが、在り様そのものが非常にエキセントリックで、でもとてもキュートで、すみません、可愛かったです。

ラストは圧巻でした。静けさと、どよめき、怒号と、そして祈り。ステージの上で彼女がひざを折った時、会場を埋め尽くすオーディエンスと共に、何が起こったか分からないで混乱する自分がいましたが、事態がハッキリ呑み込めた時、不条理な悲しみとともに、「これは小説なんかじゃない、これは伝説だ」と悟りました。だって、あまりに静かで、不条理で、正しくて、美しい、、、。
あのシーンには、うまく言えない、すべてが含まれている、そう感じました。

ロックといえば、最近は人間… 続きを読む