悲しいひとたち
ある地方で何年か前に起きた災害の合同慰霊祭に
災害の最も犠牲者が多かったデパートが建っていた今はその追悼の場となっている記念公園で式典は開催された。
式典の終わり、A-KIREIが参列者たちの前に礼服姿で立ち、楽器を抱えた。
「わたしは時々、夢を見ます。空から落ちる夢です。その瞬間、わたしは咄嗟に想像するんです」
そこで紫華は歌い始めた。
詞の朗読のような静かな曲を。
わたしは生きていた
今朝までの日々を
わたしは歩いていた
繋がっていた道を
華に
露より
いつまでも並んでいたいけど
親子だけど
夫婦だけど
兄弟だけど
姉妹だけど
友達だけど
愛情は尽きないけれど
一旦消すね
おやすみ
わたしの sweet heart
おやすみ
最後の一音で拍手は起きなかった。
歓声もなかった。
静かに泣いていたい。
目を閉じて暗い瞼の裏にオレンジ色の明かりを浮かべたい。
暖かな色の、明かりでココロを染めたい。
全員がそう願っていた。
遺族ではない、これから自分の大切なひとたちと別れていくであろう参列者も。
亡くなった人たちがこの世に遺した子供たちも。
みんなが、願った。
おやすみなさい。
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