第五章 商店のおばちゃん

 っさな商店だ。


 家の一階部分の駄菓子屋みたいな狭い店。

 田舎の港町でコンビニすら近くにないからこの高田たかた商店は町の人たちから重宝されている。


 ちょっとしたお惣菜に野菜に魚に肉に、歯ブラシや洗剤やトイレットペーパーに下着類、Tシャツまで。

 数はたくさんはないが幅広く色々な雑貨があってありがたい。


「こんばんは。おばちゃーん」


 ガラガラと立て付けの悪い引き戸を引くと開いたので俺は遠慮なく入った。

 マヤが後から続く。

 ゴン太はさっき店の真ん前の電柱にリードを繋いでお行儀よくお座りしたのを確認した。


「はいはい」


 奥の住居部分からおばちゃんが出て来た。

 小さい頃からおばちゃんと呼んでてそのまま呼んでいるが高田商店の店主はもう腰の曲がったお婆ちゃんだ。


「おばちゃん寝とった? 休んでたとこ悪いね」

「いんや、いいさね。年取るといつでも眠くなるんでかなわんね。それに山本さんとこのヒカルは常連さんだからねえ。商売人はお得意さんを特に大事にしなくちゃ。……あれ? そこの美人さんは誰ね?」


 俺はそれ来たと思った。

 田舎町では見慣れない顔には目ざといし好奇の眼差しを向ける。


「私、ヒカルさんの彼女です!」

「彼女さんかい?」

「おいっ! ……違うだろ?」


 俺は慌てて小さな声でマヤに突っ込みを入れながら肘で彼女の二の腕を小突いた。


「良いの良いの。一緒に住むんだから。彼女の方が穏便にすむって」


 俺達はコソコソ会話をした。

 

 あのさあ、マヤさんさ。だんだん遠慮が無くなって来たんですけど。

 まあ、ね。良いんだけどね。

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