岩陰の蟹
天雪桃那花(あまゆきもなか)
第一章 君と出会った
白波が立つ。
隣のビーチには大勢の観光客が海水浴を楽しんでいる。
俺に生きる資格はあるのか。
胸の奥に渦巻く思い。
ゴツゴツとした岩に座り込み本気でやる気もない釣りをしている。
考え込むときはいつもここに来ていた。
釣りはスタイルだけだ。
ただ海を眺めながら座っているだけだと通りがかった知り合いに心配される。
話しかけられて面倒だから釣りしてますという雰囲気を作ってた。
なんだ、今日は先客がいる。
若い女だ。
俺は直感で彼女はやばいなと感じた。
体中から不幸だと発している。
「やめときな。飛び込んだってそこからじゃ死ねないよ」
岩の浅瀬、今は干潮でここいらの海岸は遠くまで深くはなっていない。
「なんでおじさん、私が死にたいの分かったの?」
「さあ? 似てるからかな。俺もこの世界じゃ生きづらいから」
俺は
若いくせにくたくたな彼女は俺と出会って良かったのだろうか?
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