第7話 スゴロク式魔王城ダンジョン!?

「さあ、あらかた意見も出そろってきたな。では次の議題に移るとするか。次の議題は魔王城までの交通手段をどうするかだ。人間たちにとってはこの魔王城に辿り着くことすらハードルが高い。なんせここは魔王城だからな」



「それもそうよね。そう簡単に来られちゃ魔王城の意味ないし」



「でもさでもさ。さっき出た案をみると割と強くない人でも魔王城に来てもらわないと困るよね。結局は人間にここまで来てもらわないとお金は手に入らないわけだし」



「確かに客のいないBAR程悲しいモノはないからな。人間には気軽に来てもらえないと困る」



「ホッホッホ。この容易に辿り着くことすらできないということが魔王城を魔王城たらしめ、魔界の威厳を保つための重要な役割を担っているのです。だから人間共が気軽になんて間違っているのです」



「というわけで、俺は魔王城まで一瞬で来れるワープスポットを用意しようと思う」



「トウマ様!?」



「で、そのワープスポットだがサモンに作ってもらおうと思う」



「トウマ様!?」



「闇魔法に確かワープ系のがあっただろ。頼んだぞ」



 俺がそう言ってサモンを見つめるとサモンは愕然とした表情で項垂れた。



「魔王城№2のトウマ様がおっしゃるのなら従いますが、でも魔王城の威厳が……」



「サモン、逆に考えてみてくれ。魔王城まで気軽に来れるルートを俺ら魔族側が用意するってことは、例えどんだけ強い人間が来たとしても俺らには何の問題にもならない。今の魔王城はそれくらいの強固さを持った歴代最強の城だというアピールにもなるだろ? 実際にこのことを知ったら人間共だって驚愕するし、試しに来てみようと思うやつもでてくるはずだ。腕に覚えがあるはずの奴も含めてな。だけどそこを俺らがきちっと対処したら魔王城難攻不落の噂は瞬く間に広まるさ。そしたら威厳だって保たれる。だろ?」



「まあ、確かにそうとも言えますね。相手を自らの懐にいれて完璧に防衛したら威厳は保たれますね。わかりました。このサモン、最高の闇魔法でワープスポットを作成いたしましょう」



「ああ、頼む。お前の腕は間違いなく超一流だからな」



 俺がそう言うとサモンは心底嬉しそうに「ホッホッホ」という笑い声をあげた。



「はいはいはーい。でもトウマ。魔王城が難攻不落だって噂が流れたらそれこそ人間が寄ってこなくなっちゃうんじゃないかな」



「それは難攻不落の原因にもよるだろ。魔王城自体が難攻不落でも人間たちにもメリットがあったら問題なくあいつらは来るさ」



 俺がそう言うとフラムが俺とさっきまで出た案をチラリとみて



「なるほどね。それでさっきでた意見を活かすってわけね。つまり、ワープスポットは行きだけじゃなくて帰り用もたくさん作るってことよね」



「む? どういうことだ。俺には全然わからんぞ」



「まあ、分かったやつもいるようだが、つまり人間たちの中では魔王城に突入する=無謀  

という概念が定着しつつある。そこでだ。魔王城の至る所に帰還のためのワープスポットを作ってやる。ようはやばくなったら一瞬で安全圏まで帰れる仕組みを作ってやるってわけだ。

 さらにさっきみんなに出してもらった案を魔王城近辺あるいは魔王城内に設置ならびに作成する。普通なら魔王城内で手に入れたアイテムなんかは魔王城を攻略、あるいは脱出しなければ手に入らない。しかしワープを使えばそんなことをしなくても無事レアアイテムを持って帰ることが出来るってわけだ」



「でもでも魔王城のレアアイテムを持って帰られたらそれって結局私たちが損してるだけじゃん」



「ワープの使用料を有料にする。そしてワープを通過する際には持ち物検査を実施し、持って帰りたい物によって追加料金が発生する仕組みにする」



「え~でもそれじゃ誰もアイテムを持って帰らなくなっちゃうんじゃないの?」



「その可能性は低いと思ってる。なぜならわざわざ魔王城まで来て苦労して手に入れたアイテムだぞ。多少の金を払ってでも持って帰りたいと思うのが人の心理だ。それに何も持って帰らなくても結局帰還のためのワープ代金は発生するんだから俺たちにとっては十分有益だ。むしろ何も持って帰らないでくれる方が魔王城のアイテムも減らないから考えようによっちゃそっちの方がプラスだ」



「よく考えてるわね。どう転んでも人間たちはお金を払わないといけない仕組みになってるってわけね」



「魔王城に人間たちが寄り付かなくなった原因はその危険性が際立ちすぎたからだ。ならば俺ら魔族側が安全を保障してやればいいってわけだ。つまり魔王城ダンジョンを根本的に作り替えることで魔王城を復活させる!!」



「ホッホッホ。流石はトウマ様です」



「どうやらワープ案に関しては満場一致で賛成ってことでよさそうだな。じゃあ次はいよいよこの計画の最大の肝である魔王城ダンジョンをどんなダンジョンにするかだが、これも実はある程度は考えていて……」



 俺がチビロリ魔王からの無茶ぶりに応えるために死ぬ気で知恵を絞ったこの計画の肝となるダンジョン作成方針を発表しようとしたその時だった。



 バンッ!



 という音と共に会議室の扉が開いたのだ。



 そして現れたのは



「ふふふふ、話は全て聞かせてもらったのだ! トウマ、とても面白そうなことを考えているではないか。ではこの魔王シルフィ・リリーがどんなダンジョンにするか決めてやるのだ!!」



 今回の苦労の元凶 魔王シルフィ・リリーだった。



 そしてこのクソロリ魔王はこの場の全員が戦慄するような恐怖の宣言をし、この場を去っていくことになる。



 その一言とは



「次の魔王城ダンジョンはスゴロクにするのだ!! サイコロを振って出た目だけ進み、そこのイベントを人間たちにこなさせる形式にするのだ!!」



 訪れるは一瞬の沈黙。



 俺ら魔王軍幹部の脳裏に浮かぶは恐らく同一の言葉 



―――ス ゴ ロ クだと!? 何を考えているんだこの魔王は!!



 俺が戦慄し、身を固めているとこのクソロリ魔王は



「ではトウマ、後は頼んだぞ。失敗は絶対に許されないからな。どんな手を使ってでも人族がお金を落とすような仕組みをつくるのだ。アッハッハッハ!!」



 そういって金色のロングヘアーを揺らしながら去っていった。



 そしてそのやたら布面積の少ない魔王装束の尻のところに『月間魔界』の付録であるスゴロクボードがささっていることを確認した時、俺ら幹部はみな頭を抱えた。

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