第39話 石像の騎士
俺達に向かって来る五つの人影は、甲冑の騎士に見えた。だが、木もれ陽から照らされるその甲冑は石に見えた。
甲冑だけでは無い。手に握られた剣以外は兜からつま先まで全て石像の騎士だ。
「······君はあの石像の騎士を見た事があるような口振りだったな。あれは何だ?」
俺は魔族の男に問いかける。すると男は岩壁に向かって指を差し示した。
「あそこの岩壁をよく見ろ。こいつ等石像はあの壁から這い出て来たんだ」
魔族の男の指差す方向を俺達は見た。前方にそびえ立つ岩壁の岩肌が盛り上がり、その膨らみは人の形に変化して行く。
膨らみが石像の騎士の形になると、石像は岩肌から切り離され、石の両足を動かしこちらに向かって来た。
「な、何なのあれ!?ま、魔物?」
クレアが誰か知ってたら教えてくれと言わんばかりに動揺した声を出す。
「よく分からんが、あの岩壁に近付くとあの石像が現れ襲って来る」
切迫した状況にも関わらず、魔族の男は落ち着き払った声で説明する。
「あれは魔物ではないぞ。虹の塔の門番じゃ
」
嘘か真かネテス老人が石像の騎士の正体を明かした。最初の五体と新たに壁から出て来た五体、合計十体の石像がこちらに向かって来た。
「お前等も戦うのなら忠告するが、あの石像は物理攻撃が有効だ」
魔族の男は言い終えると腰から大剣を抜き
、片手で一体の石像に斬りかかった。唸りを上げるその鋭い一撃は、石像の左肩から右の腰までを切り裂き、石像は真っ二つに割れた。
あの魔族の男。なんて腕力と鋭い剣筋をしているんだ。
前衛の残りの四体が俺達に迫る。俺は石像の突きの連撃を剣で防ぐ。この石像の実力は先程の野党より上だったが、地底人やユリサの仲間よりは下だった。
俺は一気に間合いを詰め、石像の首に剣をを叩き込む。石像の首は半ば切断され、動きが鈍った。
俺はすかさず止めの一撃を石像の首に打ち込む。首を切断された石像は背中から倒れた
。イバト、ユリサは一体ずつ倒し、コルカは二体を倒した。
「······あの魔族の兄ちゃん。強い」
イバトが放心したように前方を見ていた。後衛の五体の石像は、全て魔族の男に倒されていた。
「一度石像を倒すと次に出てくるまでに一定の時間がかかる。ここから離れるなら今の内だぞ」
魔族の男は息を切らした様子も無く俺達に忠告した。イバトは魔族の男に近寄り、好奇心に満ちた両眼で口を開く。
「魔族の兄ちゃんはここで何をしてんの?兄ちゃんも虹の塔を探してんの?」
「虹の塔?何の事だか知らんが、俺は魔法石の採取にここに来たんだ。ここら辺は魔法石が豊富だと同僚に聞いてな」
魔族の男はそう言うと、後ろを振り返り岩壁を眺めた。
「だが現れるのはあの妙な石像ばかりでな。お前達は魔法石の在処を知っているか?」
「知っておるぞい!黒き鎧の魔族よ!お前の目の前にそれはある!」
魔族の男の質問に、ネテス老人が大声で答えた。そして、石像の騎士が出てきた岩壁を指差す。
「一年に一度夏至の今日!聖竜がこの地を訪れた時、虹の塔への道は開けるのじゃ!!」
ネテス老人が叫び終えた瞬間、俺は足元に振動を感じた。振動は一秒ごとに大きくなり
、大きな横揺れとなっていった。
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