第15話 少女の毒舌
昼食中に起こった異様な光景に、クレアが堪らずと言った様子で声を上げた。
「目の前で暴力を振るうなんて止めて!お腹が空いているなら、これをあげるわ」
クレアは両手に持ったパンと干し肉を、妙な三人組に差し出す。その途端に、クロシード、モナコ、茶色い髪の子供がクレアの両手に群がる。
「ベ、別に私はそんな安そうなパンや肉など欲しく無いが、どうしても貰って欲しいならやぶさかでは無いぞ」
「······ああ。美味しそう。パンなんて一週間食べて無いわ」
クロシードとモナコが今にも口からよだれを流しそうな顔をしている。そんな中、茶色い髪の子供がクレアの手からパンを取り、口に運んだ。
「ありがとうお姉ちゃん!」
子供は幸せそうにパンを咀嚼する。その瞬間、クロシードとモナコの顔が豹変した。
「このガキがぁ!このクロシード様を差し置いて何をしておるかぁ!」
「酷いわホケット!あ!干し肉は半分私に頂戴!お願いだから!」
ホケットと呼ばれた少年に、クロシードとモナコが掴みかかる。だが、残りの干し肉もホケット少年が素早く食べ切った。
最悪の結末に、クロシードとモナコは大口を開けたまま項垂れた。そんな落ち込む二人に、イバトが冷たく言い放つ。
「オジさん達さあ。お腹が空いたんなら働きなよ。皆、そうやって生きてんだからさ」
「イバト!それは言い過ぎよ。働きたくても無能な人達は雇っても貰えないのよ」
いやクレア。お前の方が明らかに言い過ぎだぞ。本当に空気の読めないガキだこいつ。
気付くと、クロシードがこちらを睨んでいた
。
「······労働など下賤な者がする事だ!将来、魔王候補と呼ばれる筈の私に、そんな下卑た事など必要ない!」
おいクロシードとやら。俺と同い年に見えるお前が言う将来とは何年先だ?三十男に将来などとそんな言葉を使う資格はないぞ。
「何が魔王だよ。馬鹿なのおっさん?今日食べる物に困っている奴が、どうやって魔王になるんだよ」
将来と言う言葉を使う資格がある、十五歳のイバトが冷たく言い捨てた。
「それは酷いわイバト。歳を取とってから考え方を変えるのは難しいらしいわ。もうこの人は、死ぬまでこうなのよ」
同じく将来があるクレアが無自覚に毒を吐く。いや。本当に酷いなこの女。
二人の子供に良いように言われ、クロシードは歯ぎしりをしていた。その時、黄色い髪の少女、モナコが俺達が運んでいる荷物を指さした。
「クロシード様!今、神託が降りてきました
!この木箱は私達に、巨大な幸運をもたらします!!」
モナコが叫んだと同時に、クロシードが以外にも俊敏な動きを見せ、木箱を両手に抱え走り出した。
······なんなんだ?こいつ等は本当に。
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