第13話 新たな仕事
依頼を終えた翌朝、俺は冒険者職業安定所で新たな仕事を探していた。
「エリクのおっさん。隣り街に戻らないの?
あそこが本拠地でしょ?」
寝癖がつきようも無い短髪のイバトが、新しいブーツの埃をはたきながら話す。
「戻る時間が勿体無いだろう。その間も食費がかかる。魔物や野党との遭遇戦の危険もあるしな」
経費も危険も避けられないのなら、金になる仕事をした方が効率がいい。俺は前回とは
異なり、イバトとクレアを多少戦力に考えながら仕事の難易度を考えた。
······貴重品の移送?依頼書の中から俺の目に止まったのは、小型の荷物を運ぶ仕事だった。
ただ運ぶだけなのに、報酬はそう悪くない
。しかも運ぶ場所は俺が本拠地にしている隣り街だ。
荷物を運び街に戻る。しかも報酬付きだ。俺は迷う事無くこの仕事を請け負った。荷物は木箱に入れられていた。
大きさは甲冑の兜とほぼ同じ。中身は秘密。割れ物につき慎重な扱いが要求された。
出来れば今日中に。遅くとも明日の昼前までは受取人に届けるのが条件だ。
俺はこの荷を迷う事無く自分で持つ事にした。二人のガキ達に持たせるには危険極まりないからだ。
「何が入っているのかしら?ねえエリクおじさん。ちょっと覗いてみない?」
クレアが興味深い目で、指で木箱をつついていた。
「中身を見る事は禁じられている。それよりクレア。魔法書はちゃんと勉強しているのか
?」
俺は赤毛の少女を嗜めた。俺は経費から一冊の魔法書をクレアに買い与えた。それは
魔法を造り出したと言われている、伝説のロッドメン一族を信奉する協会が発行している本だ。
しかもその本は人間の文字、魔族の文字両方で書かれていた。お陰で人間の文字だけの本より少し割高になった。
この魔力の調整が出来ないポンコツ魔法使いには、とにかくそこを集中的に学んで欲しかった。
「え?え、ええ。寸暇を惜しんで、べ、勉強しているわよ」
赤毛の魔族少女は目を泳がせながら答えた
。勉強は順調にはかどっていない事は見て取れた。
最初にクレアが火炎の呪文しか使えないと言ったのは、火炎の呪文だけは比較的調整が効くらしい。
猪のような脳内空っぽの突進馬鹿と、ポンコツ魔法使い。俺はこの連中をなんとか使いこなし、戦いを乗り越えて行かなくてはならなかった。
街を出て数時間。行路を進む俺達は何事も無く進んでいた。イバトとクレアが腹が減ったと合唱するので、少し早いが昼食にする事にした。
木の木陰に腰を降ろし、俺達は携帯食料を荷袋から取り出す。春の季節ももう終わりだが、顔を吹き抜ける風はまだ柔らかい物だった。
その時、俺達の前に三つの人影が立った。
その三人は、俺達の手にした携帯食料を凝視していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます